リリーの祈り

はじめ に
この話は本編のバクシンガーとは全く関係がございません。勝手に創作しております。このような二次小説が不快に感じられる方は ご遠慮お願いします。


  父の仕事を見て育った私。将来は父のように人の命を助けたいといつしか思ってた。そして看護師になって父の仕事を手伝うようなった。次から次へと来る患者 さん、その中にあなたはいた。

  私の顔を見てどこか照れくさいのか恥ずかしいのか戸惑っていたあなた。父から服を脱ぐように指図され全部脱ごうとしていたあなたがおかしかった。細い印象 を受けたけど上服を脱いだあなたの腕はがっちりと筋肉質だった。診察ベッドで横たわっているあなたをみてなぜか私の方が恥ずかしくなってしまった。

  あの時もう既に私達は惹かれあっていたのね。運命の出会いだった。でもそれは悲しみの始まりでもあった。

  あなたに会ってから急にお洒落に興味をもってついショーウィンドウのマネキンの服をみてはその服を着ている自分を思い浮かべてあなたの隣を歩いている姿を 想像したわ。あなたも私と同じように思っていてくれてたらどんなにいいかってそればかり考えていた。だからいつもあなたに手紙ばかり書いていた。

  いつかあなたが私を他の人に紹介するときに『僕の、僕の・・・』って恥ずかしそうに中々その続きが言えなかったけど、私はその後すぐに彼女って言ってくれ るのを待っていた。でも人に伝えるよりもあなたがそう思っていてくれたことで満足だったけどね。

  父の患者さん、シンザーク・ハイムを探しに行ったとき、あなたにも会いにいったけどまさか彼があなたの敵だなんて思わなかった。それを伝えるのを辛そうに してたあなただったけど、私もそれを知ってしまった後はとても辛かった。あの時あなたに会わずにメッセージだけを残して去ってしまった事ごめんなさい。そ うするしか方法はなかった。私にも考える時間が必要だった。

  あれからまた再びあなたに会いに行ったとき、辺りは戦争の影で恐怖と不安が入り交じっているような世界が目に映った。スリーJさんに偶然空港で会わなけれ ば私無事にあなたのところまでいけるかしらと心配になっていたわ。

  再びあなたに会えたけど、あなたの美しい青い目はもう光を失っていた。目の症状を直接父から伝えるようにと言われてたけど、実際にあなたの目がもう視力を 失っていた姿を見ると私は悲しくて仕方なかった。私あなたの側にいつまでも居たいとそればかり強く思っていたらあなたは私を受け入れてくれた。黄昏の光の 中あなたは私を抱きしめてそしてキスをしてくれた。少し泣いてしまったのは嬉しかったから。あなたと心が通いあってあの後暫く抱き合っていたけど、私あの ままあなたの思うようにされてもいいと思っていたのははしたなかったかしら。でもあなたは優しく私を抱いていてくれて私の事本当に大切に思っていてくれて いたのね。あなたのあの温もりは今でも体が覚えている。

  私もバクシンバードに乗り込んでキャシー・ルーと一緒に怪我をした人を看護したけど、私ったら無理をして過労で倒れてしまった。心配して駆け付けてくれた あなた、私を父の元に返そうとして私とても嫌だった。自分の自己管理もできなくてその結果あなたと引き裂かれるなんて私には許せなかった。それから自分の 自己管理にも気をつけるようにしたわ。あなたの側に居たいために。でもあなたもかなり疲れていたのね。目が見えない分、耳で聞く音に集中し過ぎて疲労が激 しかった。あなたをベッドに寝かして髪をそっと撫ぜたときあなたの苦しみが伝わってくるようだった。あなたは私が触れたことで少し表情が和らいだけど、私 はあの時あなたをしっかりと抱きしめてあげたかった。

  私に見せたいところがあるって案内してくれた大聖堂、あなたが洗礼を受けた場所だった。でもそこで私がみたのは私を迎えに来た父だった。あなたは私をバク シンバードの艦から降ろそうとした。私は嫌だった。あなたがなんて言おうと絶対に降りたくなかった。降りるものかって意地になったわ。

「君がいると僕は安心して戦えないんだ。僕の事を思っていてくれるのなら僕の思うようにさせて欲しい」

こんな事言われたら私もう何も言い返せなかった。あなたを愛しているが故にあなたの言う通りにするしかなかった。『必ず迎えにいく』その言葉を信じて私は 父とその場を去った。どれだけ辛かっただろう。あの後私はずっと泣きっ放しだった。

ビリー、お願い早く私を迎えに来て。あなたの無事をあなたのお姉さんと一緒に祈ってます。ビリー、早くまたあなたに触れたい。あなたの腕に抱きしめられた い。そして優しくキスをして欲しい。

ビリー、生きて。お願い、死なないで。私のビリー。


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