9創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『沈黙のレクイエム』

「キャーお姉さま〜」
廊下で数人の女学生が黄色い声を上げながら走っている。その前を黒っぽくて裾が長めのワンピースを着た女性が亜麻色の髪をなびかせ頭を押えて走っている。 そしてその女性は自分の部屋の前まで来てもう一度後ろを振り返り追ってくる女学生達を見てどぎまぎしながらドアを開けて慌てて部屋の中に入った。バタンと ドアを閉める音がするや否やガチャガチャと急いで鍵を回す音がした。追い掛けてきた女学生達はがっかりしてその部屋を見つめながら去っていった。ドアにも たれながら女性はふーと息を深く吐いて押えていた頭を虫掴みすると髪の毛がするりと取れた。それはカツラであった。そしてクルクルと波打ったような癖っ毛 の茶色い髪が現れるといつものキッドの顔に戻った。
「参ったぜ。なんで俺がこんなことしなくちゃならないんだ」
そう呟いてJ9基地へと連絡を取った。

「こちらキッド、J9基地応答願う」
暫くするとメイの姿がポータブル通信器具のモニターから映った。
「あら、キッドさん。その後何かわかりましたか」
「まだ何もわからないぜ」
そこへアイザックが現れた。
「キッド調子はどうだ」
「調子もどうもこうもないよ。なんで俺が女装してこんなところにいつまでいるのか聞きたいぜ」
「あら、キッド。女性達に囲まれて気分はどう。毎日鼻の下伸ばしているんじゃないの」
お町が言った。
「てめぇ〜、誰の代わりにここにいると思ってるんだよ。本当は女のお町がする役だろ。肝心な時に風邪なんかひきやがって、なんで俺が代わりにならなきゃな らないんだよ」
「ごめーん。まだ風邪が長引いて鼻水が止まらないのよ」
そういうとお町はティッシュを鼻に押えて鼻をかんでいた。
「キッド、そっちにボウィが向っている。特別講師として入り込む。後は宜しく頼んだ」
「わかったよアイザック。ボウィも来るならまだ心強いぜ。とにかく一刻も早くここから抜け出すために全力を尽すぜ」
そう言うと通信は切れた。キッドは今後どうすべきか考えようとしたがカツラをちらりと見ると一つ深くため息を洩らした。

事の初めは1週間前の事。依頼人がポンチョとJ9基地に現れた。今回の依頼は女子学校の寄宿舎で不自然な死を遂げた娘の真相を知りたいために親が調査をし て欲しいと頼んできた。学校や警察の説明を受けてもどうも納得がいかず、また他殺か自殺かもはっきりしない状態で娘の死の真相をどうしても知りたくてJ9 に依頼をしてきたのだった。
「娘はとても明るい誰からも好かれる子でした。自殺するような子ではないのです。しかし殺されるような恨みを買う事も考えられません。何かに巻き込まれた としか考えられないのです。娘の無念を晴らすためにも私達が出来ることは真実を知ることなんです。お願いします。なぜ娘は死ななければならなかったのか調 べて下さい」
母親がうっすら涙を浮かべながら言った。隣で父親が母親の肩を抱きしめて辛そうな顔をしていた。その姿を見てJ9は依頼を受けることを決めた。真相を知る ためには学校に先入するのが一番だと言うことでお町が女学生になって先入する予定だった。しかし熱を出す風邪を引いて急遽キッドが代わりをする羽目になっ てしまった。キッドも女性達に囲まれるのはそんなに悪いことじゃないかもと少し期待をしていたが、実際はそんな甘いものではなかった。女装をしているとは いえ中身は男。時々でる荒っぽい性格が女学生達にはかっこいいお姉さまと称され反って目立つようになり、しつこく追い掛けられるようになった。またばれな いようにしないといけないことも苦痛で無理やり女らしくしようとフリする自分が情けなくなり毎日葛藤していた。
「俺、癖になっちまったらどうするんだ」
不安になりながらもとにかく事件の真相を調べようと依頼人の娘、レイチェルの事について聞き出そうと必死になった。しかし思った程何もわからなかった。た だ分かっていたのはレイチェルは音楽室の床に冷たく横たわっていたという事だった。その音楽室は開かずの部屋となり誰一人近づこうとするものはいなかっ た。

ドアを開け辺りを確認しながら女装をしたキッドが部屋から出てきた。時間は夕食前だった。皆夕食を取りに食堂へと集まっているため寄宿舎はひっそりとして いた。チャンスだと思いキッドは音楽室へ向った。音楽室のドアは鍵がかかっていたがスカートをまくりあげて銃を取出して一発鍵に向ってぶち込んでやった。
「少々荒っぽいけど仕方ないぜ。どうせ誰も寄り付かないんだ。気が付かないだろう」
キッドが音楽室に入ると一番最初に部屋の端の窓際にあるグランドピアノが目に飛込んできた。
「ピアノか」
ギターが得意なキッド。音楽は心得ている。グランドピアノの蓋をそっと開けて鍵盤を軽く押えてみた。ポロンと音が音楽室に響いた。そしてグランドピアノの 上に楽譜が置いてあったのでそれを手に取った。その楽譜を見ながら曲を弾くと美しい音色が響いた。
「君、そこで何をしている」
キッドははっとして振り返った。ドア付近に男が一人立っていた。ゆっくりとキッドに近づくとキッドは緊張した。思わず銃に手がいきそうになったが、自分は 女学生で目の前の男は教師だと思い直すと手はスカートの下に隠してある銃から遠ざかった。
「いえ、おれ・・・あの、その私、ピアノが好きで弾きたくなって来ちまった、いえ来てしまちゃったんです。アハハっ」
「ここは鍵が閉まっていたはずだが、どうやってここへ入ったんだ」
「あの、その、鍵を壊して、いえ、その鍵が壊れてまして・・・」
「君は先日転校してきたばかりだったね。名前は確かキディ・・・」
「いや〜だ、先生、私の事知ってたんですね。オホホホ。先生は確か歴史の先生」
「いや、私は数学だ」
「あら〜私としたことが、ごめんなさ〜い。キディったらもう馬鹿なんだから、へへへへ」
キッドはなんとかごまかそうと必死だったが情けなかった。
「君はピアノが得意なのかい」
「オレ・・・いえその私はギターが得意なんですが、少しならピアノも弾けるんでございますのよ」
「そっか、でもさっきの曲を聞いたときある学生を思い出したよ」
それを聞いたキッドはもしかと思って真顔になった。
「この間死んだという学生のレイチェル?」
その名前を聞いて男は少し慌てた。キッドは図星だと思った。更に質問をしてみた。
「先生はレイチェルの事について何か知っているのかい・・いえ、ですか」
「いや、何も君に話すことはない。君は転校して何も知らないだろうが、その事についてはこの学校では誰も話したがらない。それよりも早く食堂に行きなさ い。食事はまだだろう」
そう言ってキッドは音楽室から追い出された。そして数学の先生と一緒に肩を並べて食堂まで歩いた。キッドはまじまじとその男をみつめた。背丈は自分よりも 少し高い。そして黒髪のイタリア系のような顔をしている。女性にもてそうな感じだと思ったが自分の方が遥かにかっこいいぜなどと思っていると目があった。
「どうした。何か言いたげそうだが」
キッドは慌てて目をそらした。自分の方がかっこいいと思っているなんて口が裂けても言えるわけがない。しかも今自分は女だった事を思い出した。
「いえ、先生ってかっこいいな〜なんて思ってその、アハハ」
その教師は何も言わず少しだけ微笑んだ。キッドはやべーと思いながら少し下を向いて歩いていた。
「ジョバンニ先生」
そう言って校長は数学の教師に声をかけた。校長の側にはボウィが立っていた。ボウィはキッドを見てニヤリと笑った。キッドは『うっせいんだよ』とでも言わ んばかりにふてくされた。
「明日からこの学校で特別講師として勤務するボウィ先生です。経済を担当してもらいます。ボウィ先生、こちらは数学担当のジョバンニ先生です。何か分から ないことがあれば彼に聞いて下さい。彼はとても世話好きの優しい先生なんです」
ボウィは宜しくと一言挨拶をして握手をした。そして一同食堂へと向った。校長とジョバンニ先生が肩を並べて何かを話しながら歩いている後ろ少し離れてボ ウィがキッドにヒソヒソと話しかけた。
「キッド、中々似合ってるぜその格好。俺ちゃん惚れちゃいそう」
「バッキャヤロー、ぶっ飛ばすぞ。ボウィこそなんだよそのスーツ姿。見慣れないぜ。しかも経済なんて教えられるのか」
「いつもの格好で教師役出来るわけないだろう。ここへ入り込むにはこうするしかなかったんだよ。ポンチョが手配したんだ。仕方ないんだよ。とにかく何か分 かったか」
「いや、まだだ。でもあのジョバンニという教師、レイチェルについて何か知ってそうだ」
こそこそ話しているとジョバンニが振り返った。思わず二人はそっぽを向きながら何もないフリをして歩いた。

食堂に入ると一斉に女学生達の注目を浴びた。そしてヒソヒソと声がするのが聞こえた。
「キディお姉さまったらジョバンニ先生といっしょだわ」
「あの男の人誰かしら。新しい先生かしら」
キッドは一番端のテーブルで一人で座っている眼鏡をかけた黒髪のショートボブの女の子の隣に座った。
「ここいいだろう?」
そう言うと女の子は真っ赤になって頷いた。それを見ていた女学生達は女の子に嫉妬した。

「皆さん食事の前にお知らせがあります。明日から特別講師として来てくださいましたボウィ先生です。経済を担当してもらいます。皆さん先生の言うことを良 く聞いて勉学に励んで下さい」
校長がそう紹介するとボウィも挨拶した。
「そういう訳でここで教師として教える事になったボウィだ。沢山のかわいこちゃん達がいて俺ちゃん緊張しちゃうけど、よろしく頼むぜ」
その挨拶を聞いてキッドは手を顔にあててヤバイと思った。
「あちゃーボウィ、やってくれるぜ。大丈夫かよ」
小声でそういうと、隣に居た女の子は不思議そうにキッドを見つめた。キッドは慌てて作り笑いをしてごまかした。また女の子は顔を真っ赤にしてうつむいてし まった。

食事をしながらキッドは女の子に話しかけた。
「君、確かクラス一緒だよな、名前なんていうんだい」
「私、ジュンです」
恥ずかしそうに答えるがクラスの人気者のキッドに声をかけられて嬉しくてたまらない様子であった。
「君、もしかして日本人かい?」
「は、はい」
自分と同じ国出身と言うことで少し親近感を得たキッドだった。
「なあ、ジュン。レイチェルって知ってるか」
「あ、その、彼女はとても優しい人でした。誰にでも好かれて、こんな私でも本当に仲良くしてくれた」
ジュンは悲しそうな顔をして答えた。
「レイチェルとは仲がよかったみたいだな。すまねぇ、悲しい気持ちにさせて」
「でもなぜレイチェルの事を聞きたいの」
キッドは逆に質問されてあたふたしてしまった。
「いや、その、なんかミステリーな事件だろ。つい首を突っ込みたくなって」
「私もレイチェルの死の真相を掴みたいと思っていたの。友達だったから余計にそう思った。でもレイチェルが慕っていた先生すら彼女の事を忘れようと皆何も 語りたくないみたい」
「レイチェルが慕っていた先生って誰だい」
「ジョバンニ先生よ。レイチェルはジョバンニ先生に夢中だったわ。でもジョバンニ先生には恋人がいた。レイチェルはそれでもピアノの曲が好きなジョバンニ 先生に一生懸命演奏してあげていたわ」
それを聞いてキッドは驚いた。何かこの事件の解明の光が差したような気がした。もっとジュンから詳しい事を聞こうとしたとき数人の女子学生がキッドの前に 現れた。
「お姉さま、ジュンなんかと居てもつまんないでしょ。ねぇこれから、明日の宿題一緒にしましょうよ」
そう言ってキッドを無理やり引っ張っていってしまった。キッドは『放っておいてくれ』と叫びたかったが女らしくしようと押えていた。ただ心の中で『く そ!』と呟いた。

次の日、キッドは一目散にジュンを探した。ジュンを見つけると『おはよう』と笑って声をかけた。ジュンはキッドから声をかけられてとても嬉しかった。
「なあ、ジュン。昨日の話の続きなんだけど、おれ・・・いや私もレイチェルの事件の真相を知りたいんだけど他に知ってる事があったら教えてくれないか」
ジュンはキッドに見つめられて顔が赤くなったが、一緒にキッドと居られると思うと承諾した。その様子を見ていたキッドのファンの女の子達は益々ジュンに嫉 妬した。

一方初授業となるボウィ。この学校に潜り込むとはいえ、教師の資格も経済学の知識もなく、ただ仕事のために行き当たりばったりできてしまった。初めての授 業で事の重大さに気が付いて思わずあたふたする羽目になった。
「それじゃ皆さん、経済についてですが、まずは皆さんはどれぐらい貯金持ってますか」
金の話しかできないボウィだった。最初は自己紹介とかこつけてなんとか授業はごまかせた。これから先が思いやられるのでキッドと同様に一刻も早く真相を掴 むことに専念しようと思うボウィであった。

キッドはボウィと連絡を取るために誰も寄り付かない例の音楽室を会う場所に決め、早速ボウィと会う約束をした。
「ボウィ、最初の授業はどうだった。うまく教えられたか」
「俺ちゃん、教師には向いてないわ。一刻も早く真相を掴まないと俺ちゃんこんな生活耐えられないぜ」
「馬鹿、それは俺の台詞だ!」
「でもキッドさん何かわかったのか」
「ああ、ちょっとわかりかけてきた。レイチェルは数学教師のジョバンニに夢中だったみたいだ。しかしジョバンニには恋人がいる。どうも三角関係のもつれの 匂いがするぜ」
「ジョバンニか。OK、俺ちゃんも彼から何か聞き出してみるぜ」

キッドが次の授業に向おうとしたときジュンが女の子数人に取り囲まれて責められている光景を目にした。
「ちょっとジュン、あんた生意気よ。ちょっとキディお姉さまに声をかけられたからと言っていい気になるんじゃないわよ」
「おいおい、お前ら何してるんだ」
そこへキッドが顔を出したから女の子達は焦った。
「お姉さま〜。いえ、なんでもないんです」
「いいか、俺は」
「俺?」
「いや、私は陰でこそこそする奴が大きれぃなんだ。俺、いや私が誰と仲良くしようが関係ねぇ。ジュンは俺、いや私の友達だ。いいか変な考えはよせよ」
キッドがそう言うと女の子達は気まずそうな感じで去っていった。キッドもこれでもう追っ掛けられる事もないだろうと思った。ジュンはキッドがかばってくれ たので嬉しくてつい泣いてしまった。
「おいおい、ジュン。何泣いてるんだよ。もう奴等はいったぜ。すまなかったな俺、いやその私のせいでこうなっちまって」
「キディ、違うの私の事友達って言ってくれたのが嬉しかったの。そう言ってくれたのキディとレイチェルだけだから」
ジュンは消極的な性格のせいであまり友達がいないとキッドは思った。

「ジョバンニ先生、ちょっといいですか」
ボウィが声を掛けた。
「ボウィ先生、初めての授業はいかがでしたか。緊張されたんではないですか。でも生徒からは好評でしたよ。気さくで楽しい先生だって言ってました」
ボウィはそれを聞いて少し嬉しかったが、明日の授業を考えるとどうしようかとまた不安になった。
「ジョバンニ先生は生徒に特別な感情とかでてきませんか。教師として平等にすべきなのはわかってるんですけど、どうもこれだけかわいい生徒に囲まれるとつ いつい要らぬ感情も湧いてきたりしちゃいそうで、あはははは」
「そうですね。教師としては公平にならないといけないんですけど、ボウィ先生の言いたいことはわかります。ここだけの話ですが私もそのような感情を持った 事ありますから。人間ですから仕方ないですよね」
ボウィの目は光った。
「そういう気持ちになった生徒ってどんな感じの人でしたか」
「お言葉ですが、ボウィ先生、それはお教えできません。私もそういう感情を持つこと事態悪いことに感じますので人に話せる話題ではないです」
「すみません。余計な事を聞いて」
ボウィはそう簡単にジョバンニがレイチェルの事について話すはずはないと思った。ジョバンニはボウィを見つめて静かに微笑んだ。

いたずらに時が過ぎた。音楽室でキッドとボウィは相変わらず会っては情報を交換していた。
「俺ちゃん、授業のために毎日勉強してるんだぜ。疲れたぜ。早く子猫ちゃんに乗って一走りしたいぜ」
「俺ももう女の格好は嫌だぜ。女としてもてるのも疲れたぜ。なんで女が女を好きになるんだよ。女子校って想像を絶するところだぜ」
キッドとボウィは愚痴の言い合いになっていた。そこへ人の気配がした。キッドが入り口のドア付近に行って辺りを確かめると遠くで人影が消えるのをみた。
「やべぇ、俺達が一緒にいるところを誰かにみられたみたいだ」
キッドはもうこれ以上長居できないと思った。

その日の夕食前に校長先生が突然ボウィとキッドを呼び出した。
「ボウィ先生、教師と言う立場上生徒と密会するような行為は止めて頂けませんか。二人は時々音楽室で会っているそうですね。ここではあくまでも先生は先 生、生徒は生徒です。こんな事が親にばれたら大問題で学校の信用にかかわります。」
キッドもボウィも誰か告げ口したと思った。
「いえ、違うんです。俺ちゃん達の間には別に何もそんな事は」
ボウィはいくら誤解でもそんな馬鹿げたことがあるかと思った。
「やめてくれよ。変な事は何もないぜ、おっさん!」
キッドも嫌がった。思わずいつもの男に戻っていた。
「校長に向っておっさんとはなんですか。言葉に気をつけなさい。ボウィ先生といい、ジョバンニ先生といい、どうして生徒に特別な感情を持ってしまうので しょうか」
「ジョバンニ?」
二人は声を揃えて言った。
「いえ、こっちのことです。どうか自分達の立場をしっかり認識しなさい」
校長に叱られた後、二人はぶつぶつと呟きながら食堂へと向った。
「さっき俺達が居るところを見た奴が告げ口したんだぜ。それにしても学校の信用にかかわるか。なんだかこれがひっかかるぜ」
キッドが言った。

次の日、ボウィの机の上に小さな箱がリボンをつけて置いてあった。中を開けるとそこには一口大のハート形のチョコレートが4つ入っていた。それを見ていた 他の先生が言った。
「女子校ですからね。先生の事好きな生徒からでしょう。早速人気ものですね」
ボウィはキッドに見せて自慢してやろうと箱を背広のポケットにし舞い込んだ。ジョバンニはその光景をじっと見ていた。

キッドは授業をさぼり音楽室へと向った。何か見落としてないかもう一度確認しようとした。キッドの推理からするとレイチェルは他殺だと言う結論に達してい た。そこへ人の気配を感じた。
「ボウィか」
キッドがそう言って振り向くとそこにはジュンが居た。
「キディ、ここで何をしているの」
キッドは驚いた。
「ジュンこそ、ここに何の用があるんだ」
「お願いキディ、目を覚まして。ボウィ先生には彼女がいるのよ」
それを聞いてキッドはびっくりだった。
「ボウィに彼女!まさっか。居るわけないよ」
「でも私見たの。女の人と連絡を取ってるところを」
多分仕事の報告でお町と話をしてるところを見られたんだろうとキッドは思った。ジュンは泣きながらキッドに近づいた。
「お願い。レイチェルみたいにならないで。レイチェルもジョバンニ先生なんかを好きにならなければ死ぬ必要がなかったのに。レイチェルを殺したのはジョバ ンニ先生よ」
それを聞いてキッドは耳を疑った。
「ジョバンニがレイチェルを殺したって。本当かそれは。でもなぜだ」
そこへボウィが嬉しそうに入って来たがジュンを見てはっとした。ジュンはその場から逃げ出そうとしてドアを目指して走ると次にドアから入ってきたジョバン ニとぶつかった。そしてジョバンニはジュンの腕を掴んで離さなかった。ジョバンニの顔は厳しかった。
「おい、ジョバンニ、ジュンの手を離すんだ」
キッドが叫んだ。ジョバンニはジュンを責めるような目で見つめた。それは怒りの目だった。そしてキッドの手には銃が掴まれていた。それを見たジョバンニと ジュンは驚きのあまり唖然としてしまった。
「キディ、な、なんて言うものを学校に持ってきているんだ」
ジョバンニが慌てて言った。キッドはもうもどかしくなった。
「ええーい、もう面倒だ。女のフリなんてやめたぜ」
そう言うとカツラを外し、ワンピースも引き剥がした。いつもの黒のキッドの戦闘服姿が現れるとボウィが横で口笛を吹いた。
「やっぱりいつものキッドさんが一番だぜ」
その姿を見てジョバンニもジュンも呆然としていた。

「おい、ジョバンニ、なぜレイチェルを殺した。学校の信用のために口封じか」
キッドが銃を構えてそういうとジョバンニは我に返った。
「私はレイチェルを殺すつもりなど全くなかった。あれは事故だった。本当は私が死ぬはずだった。そうだろジュン」
ジュンは手をしっかりと掴まれて逃げる事が出来ずその場で下を向いていた。
「一体どったの。俺ちゃんなんの事かさっぱりわからないぜ。最初から分かるように説明してくれないか」
ボウィが尋ねるとジョバンニはボウィに向って言った。
「ポケットに入れたチョコレートの箱を私に渡して下さい。それはジュンがあなたに渡した毒入りのチョコレートです」
ボウィは毒入りと聞いてぶったまげた。そして恐る恐るポケットから箱を取出しジョバンニに渡した。
「さあジュン、もしこれが毒入りじゃないのならこのチョコレートを食べてくれないか」
ジョバンニはジュンにチョコレートを差し出した。ジュンはチョコレートの箱を床に落した。そして泣き崩れてしまった。

「そうよ、本当は私ジョバンニ先生を殺したかったの。ジョバンニ先生がチョコレートを食べるはずだったのに、レイチェルが勝手にジョバンニ先生の鞄から チョコレートの箱を見つけて先に食べてしまった」
「なぜだ。なぜジョバンニを殺そうとしたんだ」
キッドが聞いた。そして代わりにジョバンニが答えた。
「ジュンはレイチェルを私から奪われたくなかったんです。ジュンにしてみたら私がレイチェルを一人占めしていると思ったんでしょう。レイチェルも私に気が あった。しかし私はあくまでも教師の立場を守っていた。だから恋人がいると嘘をついてレイチェルとの立場を明確にしたかった。しかしレイチェルはそれでも 私を慕ってくれた。私もそんなレイチェルに心奪われてしまって教師という立場が揺らいでしまった。不覚にもここでレイチェルとキスをしてしまい、それを ジュンに見られてしまった。ジュンはそれが許せなかったんです。だから私を殺そうと計画を立てた。しかしそれは裏目に出てしまいました。そして今回もキ ディという大切な友達をボウィ先生に奪われたくなかったために全く同じことをしようとしたんです。また私もレイチェルと関わりを持っていたために教師の立 場としてこの事件の真相は何一つ話す事ができませんでした。」
意外な真実にキッドは悲しくなった。ボウィもまた胸をなで下ろした。
「成る程、俺ちゃんがチョコを貰ったのは毒入りだったのね。食べないでよかったぜ」
「しかし、キディ、なぜ女装などをしていたのですか」
ジョバンニは不思議そうにキッドを見ていた。
「俺達は、コズモレンジャーJ9。レイチェルの謎の死の解明に彼女の両親から雇われたのさ。そのために俺が女装して入り込んだと言う訳さ」
「そういうこと。俺ちゃんも教師は全くのでたらめ」
ジョバンニもジュンも圧倒されてその場に立って二人をまじまじとただ見ていた。

この事件は解決したかのように見えたが、レイチェルの両親に真相を報告すると公に好評しない事になった。あまりにも悲しい出来事だが、娘のためにも誰も恨 みたくないと思う親心がそうさせたみたいであった。真実はあくまでも事故だったと解明することで両親もまた娘を失った気持ちが少しは和らぐようであった。

突然学校からキッドとボウィが消えたので、校内中二人は駆け落ちしたと噂になり、学校の伝説話と化した。これでずっと語り継がれる話題となってしまった。

「ちぇっ、極秘調査だとはいえ、なんでこの俺がボウィと駆け落ちしたことになるんだよ」
「まぁ、いいじゃないの。俺ちゃんはそれでもいいぜ。だって女装したキッドさん綺麗だったぜ。痛〜」
頭を殴られたボウィであった。
「お町、この借りは返して貰うぜ」
キッドはお町に奴当たった。
「あら、やだーキッド。キッドだからめでたく解決したのよ。貸し借りなんて最初からなかったわ」
お町の態度に益々キッドは腹立だしくなった。
「くそ〜なんだよ」
そこへアイザックが入ってきた。
「キッド、ニューハーフコンテストがあるぞ。これに参加してみないか」
「アイザック、冗談は止めてくれよ。もう女装はこりごりだぜ」
「そっか、優勝賞金は300万ボールなんだが」
「えっー、そんなに貰えるのか。俺ちゃんやっちゃうもんね」
「ボウィでは無理だろう」
あっさりとアイザックに言われ皆にも笑われてがっくりするボウィであった。キッドは自分の頭を触りずっと長かった髪の毛がなくなって少し違和感を感じるよ うになったかもと思うと自分の女装姿を思い出してふと笑うのであった。

さ迷える魂を
レクイエムが慰める
弾き手がないピアノから
胸に響く悲しいメロディ
真実知れば何もいえず
美しいメロディをただ想像しよう
銀河旋風ブライガー
お呼びとあらば即参上!

おわり


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