8創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

『こだわりの友情』

「爆弾を10ヶ所に仕掛けた。時間は10分だ」
アイザックがぬかりはないなというような顔でキッド、ボウィ、お町に合図をする。
「10分もあれば余裕だぜ。なんせ俺ちゃん達はプロだもんね」
ボウィが人指し指を立てて帽子のツバの部分を軽く上に押し上げた。そのボウィの言葉でキッドが『イエ〜イ』と親指を立てるとお町も軽いノリで答える。アイ ザックも軽く微笑みを交して、ボウィが最後に『イエ〜イ』と親指を立てた。4人は走って敵のアジトの中に入り、依頼人からの仕事をこなそうとしていた。

「ボウィさんよそ見してちゃ危ないぜ」
そう言いながらキッドが敵を鮮やかに撃った。ボウイの頭上辺りから敵がキッドに撃たれて落ちてきた。
「ひえ〜、さすがキッドさん。隠れた敵も見逃さないね。この正確きわまりないお見事な技ですね。それでは俺ちゃんも」
ボウィは柱の陰からキッドを狙っていた敵を撃った。
「ああ、あれくらい気がついてました。俺の仕事取られちったぜ」
「キッド、素直に礼を言ってもいいじゃないか。俺ちゃんだって子猫ちゃん操縦するだけが仕事じゃないぜ」
「ちょっとあんた達、ぶつくさ言ってないでさっさと早くしてよね。爆発まであと5分よ」
「ちぇ、折角楽しんでるのに、お町はうるさいぜ」
「あらら、悪かったわね、キッド」
お町は少し立腹しながらキッドの後ろに居た敵を八つ当たりのように撃った。
「おいおい俺がターゲットかと一瞬思ったぜ」
こんな調子で危ない仕事も楽しく茶化しながらいつものようにこなすJ9達。今回もJ9の活躍でめでたく依頼通りに事が済みそうだった。そこへアイザックが 現れた。
「秘密文書を手にいれた。皆建物の外に出ろ。ここにはもう用はない」

一同出口へと向った。その時撃たれて死んだと思っていた敵の一人が床に伏せながら最後の力を振り絞りボウィに狙いを定めて銃を放った。一足早くキッドがそ れに気が付きボウィを力強く突き飛ばし敵に向って銃をぶっ放した。ボウィは不意の事でキッドに突き飛ばされて倒れてしまい、その拍子に被っていた帽子まで 飛ばされてしまった。
「あ〜痛ぇな、もっと優しく突き飛ばして頂戴よ、キッド」
「馬鹿、突き飛ばすに優しくもあるかよ、時間がない、ほら早く起きろボウィ」
ボウィが帽子を拾いに行こうとするとそこへまた敵が数人現れた。ボウィは手を伸ばして帽子をつかもうとするが敵が銃で応戦をしてきたため帽子を取り損ね た。
「皆、急げ爆発までもう時間がない」
アイザックの言葉にお町、キッドが出口に向おうとしていたがボウィは自分の帽子を拾おうとその場に留まった。
「ボウィ、何してるんだ、早く来い」
キッドがそう叫んでもボウィは帽子を拾おうと必死で敵と交戦をしていた。
「俺ちゃんの大切な帽子なんだよ。ここに置いて置くわけにはいかね〜」
そう言ってボウィが手を伸ばしてもう少しで帽子に手が届こうとしてたときの事だった。油断していたボウィの右肩付近を敵の撃った銃が命中した。
「ボウィ!くそ!何やってるんだ」
キッドは敵を撃ち落とし、負傷したボウィを肩でかかえながら出口へと走った。
「キッド待ってくれ、俺ちゃんの帽子が」
「馬鹿、もう爆発する寸前だ。俺達の命が危ないぜ」
キッドは有無を言わせずボウィを肩で支えて出口に走った。そして出口が見えたところで仕掛けた爆弾が一斉に爆発した。爆発で辺りに散らばった建物の破片が キッドとボウィに容赦なく降掛かった。なんとか建物の中から危機一髪で脱出できたものの、最後の爆発はキッドとボウィの体に軽い傷を負わせた。ボウィは置 いてきた自分の帽子に未練たっぷりでまだ爆発で大変な事になってる建物の中に戻ろうとするしぐさをみせた。
「ボウィ、いい加減にしろ。お前のせいで俺まで被害にあったぜ」
「ちょっと、ボウィ! 肩撃たれてるじゃない」
お町がびっくりしていると、空から敵のロボットが現れた。
「ブライガーで応戦だ」
アイザックが言うと皆ブライサンダーに乗り込んだ。
「ボウィ、操縦はできるか」
アイザックが少し心配していたがボウィは『ああ』とだけいってブライガーへと変形をさせた。肩の痛みのためにいつもと違ってボウィは少し操縦がしにくかっ たが、キッドのブライソードのお陰で敵はやっつける事ができた。

「ボウィ、傷口を早く手当てしないと、なんだか軽傷と言う感じではなさそうよ」
お町が心配をした。ボウィはブライスターを無口で操縦していた。肩の痛みがこらえられずに操縦を謝って側にあったスペースロックの帯の中に入り込んでし まった。いつものボウィなら見事に紙一重で避けられるところまともにぶつかってしまい一同その衝撃で体が大きく揺れた。なんとか抜け出す事ができたが、ど うもボウィの様子がおかしい。傷口が思ったより深くボウィは気絶寸前だった。すぐにキッドが操縦を変わりブライサンダーへと変形してJ9基地へと急いだ。

メイから手当てを受けボウィはベッドで寝ていた。しかしどこか息が荒らかった。熱もあるようだった。
「ちょっと大変な事になったわね。ボウィが重傷を負うなんて。一体何があったの」
お町がキッドに尋ねた。
「それがあいつ、落した自分の帽子を取ろうとして敵に撃たれっちまった」
「帽子?」
アイザックはボウィが帽子を被ってなかったことに気が付いた。
「ああ、ボウィの奴、帽子ばかりに気が取られていた。お陰で俺まで被害被ったぜ」
キッドもまたメイに顔のかすり傷の手当てを受けていた。
「痛〜! しみるじゃないか。メイもっと優しくやってくれよ」
「キッドさん、これくらい我慢して下さい」
メイはキッドが痛がろうがなんであろうが何も思わずにどんどん消毒液をつけてキッドを痛がらせた。それを見ていたシンは側で見て笑っていた。ポヨンは消毒 液が入っていた瓶を手に取るとキッドの顔に目掛けてぶっかけてしまった。目まで滲みてしまってキッドは怒りまくった。
「ポヨン!この野郎待て!」
キッドはポヨンを追い掛け談話室から飛び出した。そしてボウィの部屋の前まで来るとボウィがうなされてる声を聞き心配して部屋に入った。
「帽子が・・・」
ボウィがうわ言でそう言った。ボウィが危険を被りながら帽子を拾おうとした様子を思い出し、キッドはあの帽子には何かあると感じた。冗談を言い合ってはい つもふざけあっているボウィの苦しんでいる姿を見てキッドはいつになく不安を感じた。その場を去ったもののあの辛そうな顔をしてベッドに横たわっているボ ウィの顔が頭から離れなかった。キッドはふと思い立ったようにバイクに股がった。ポヨンが不思議そうに首を傾げながらバイクの後ろにしがみついた。

「ねえ、キッドさんどこへ行ったのかしら。まだ傷の手当てが終わってないんだけど」
メイがアイザックとお町の前で呟いた。
「キッドの奴、ポヨンにあんな事されたから必死で追い掛けてるんじゃないの。おいらちょっと見てくるよ」
シンが笑いながら答えた。
「あの調子ではポヨンを殺しかねない様子だった」
アイザックも言った。
「まさか、いくらキッドでもポヨンを殺す訳ないわよ。それだったら銃で一打ちするだろうし」
お町がそういうと、そこへボウィが現れた。
「ボウィさん、まだ寝てなくっちゃ」
メイが心配そうな表情で言った。
「ボウィ、ベッドで休んでるんだ」
アイザックが怖い表情で脅したがボウィは聞かなかった。
「これぐらい大丈夫だ。それよりも皆に迷惑をかけてしまって申し訳ない。一言謝りたくて・・・キッドはどこだい」
ボウィがそう聞いたその時シンが走って来た。
「大変だ。キッドもポヨンもどこにも居ない。キッドのバイクも見あたらなかった。まさかポヨンを殺して捨てに行ったんじゃ」
シンが泣きそうになった。
「いやだシン。そんな事ある訳ないでしょ」
「お町さん、じゃどうしてキッドさんもポヨンも居ないの」
メイがおっとりとして聞いた。
「キッドのバイクもないのなら一体どこへ行く必要が・・・」
とアイザックが言いかけながらボウィの帽子の事を思い出した。
「キッドはボウィの帽子を探しに行ったのかもしれない」
「俺ちゃんの帽子を?まさか、それは違うぜ。第一あの爆発じゃもう吹き飛ばされているぜ」
ボウィは自分でそういいながらもどこか帽子に未練があった。その様子を見てアイザックは聞いた。
「ボウィ、帽子には何かあるのか。怪我をしたのもその帽子のせいだとキッドは言っていたが」
「そう言えば、ボウィのトレードマークとも言うべき帽子よね。いつも被ってるし、他の物は被らないし何か訳でもあるの?」
お町が聞いた。ボウィは少し考えながら真剣な顔で話し出した。
「俺ちゃん、あの帽子がないと調子が出ないんだ。昔あの帽子を被った時に良いことがあってそれ依頼ずっと被っているんだ」
「何それ〜、たったそんな理由であの帽子を被っていたの」
お町が呆れた。
「俺ちゃんにとったらお守りのような物なの。一つや二つそういうものあってもおかしくないでしょう」
「とにかく理由はなんであれボウィ今は体を休めるんだ」
アイザックにそう言われ渋々とボウィはベッドに戻った。

その頃キッドは爆破した敵の陣地へと再び戻っていた。多数の敵はやっつけたもののまだ崩壊した建物の周りには残りの敵達が後片付けをしているのかかなり居 た。キッドは物の陰に隠れながらも敵に見つからないように近づいた。どうしてもボウィが落した帽子を探してやりたかった。あの爆破できれいな形のままで 残っ ているとは思わなかったが、ボウィのためにも帽子の破片でも見つけてやりたい気持ちだった。
「しかし、まだ敵がうようよだぜ。しかもあんな瓦礫の下から見つけられるだろうか」
キッドは建物の構造を思い出しながらどの辺りか的を絞っていた。そしてポヨンがいきなり敵の前に姿を現しておどけた。
「馬鹿、ポヨン!」
しかしそのお陰で敵の目をポヨンに釘つけにすることができ、キッドはその隙に帽子がありそうな場所を目掛けて敵に見つからず走り出すことができた。
「ポヨンもたまには役に立つじゃねぇか」
キッドは直ぐ様瓦礫をめくっては帽子がないか調べた。そう簡単に見つかる訳はなかった。もしかしたら爆発と一緒に吹っ飛んでしまった事も考えられる。かな り躍起になって探しているときにキッドの背中でガチャリという音が鳴ったかと思うと何か突きつける感触を受けた。
「チェッ、ついてないぜ。あの帽子でボウィが重傷を受けたと思ったら、今度は俺の命が危なくなってきたぜ」
「ここで何をしている。こっちを向け」
ゆっくりとキッドが振り向くと敵はキッドの胸のJ9のマークを見てすぐに気が付いた。
「J9!よくもこんなことをしてくれたな。仇をとってくれるわい!」
そう言ってキッドを撃とうとしたが、敵がぶつくさ言っている間にキッドの足の方が早かった。相手の銃を蹴り払い、キッドは逃げようとした。他の仲間も気が 付き必死になってキッドを捕まえようと銃で応戦してきた。キッドも応戦するが、さすがの銃の腕前を持っても数には勝てそうになかった。
「くそ〜、やっぱりボウィの帽子は疫病神かなんかじゃないのか。ここから逃げなくては俺までやばいぜ」
キッドはなんとかバイクに股がり逃げようとしたが、ポヨンを忘れていた。ポヨンはJ9のペット兼家族のようなものである。見捨てる事はできなかった。ポヨ ンを探しにまたバイクで敵の中に突っ込んだ。
「ひえ〜俺、ちゃんと生きて帰れるだろうか。やべ〜」

「キッドまだ帰って来ないわね。まさかやばい事になってたりして」
お町が冗談でそう言った時J9の緊急時になる信号が部屋中響いた。それはキッドからだった。
「すまねえ、ちょっとやばい事になっちまって、ここから抜け出せそうにもない。面目ねえ」
画面のキッドの姿はどうやら左肩を撃たれているようだった。
「キッド、今すぐに助けに行く。なんとか生き延びるんだ」
アイザックとお町は慌ててキッドの救出に向おうとバタバタ廊下を音を立ててブライサンダーに向った。その騒ぎように気が付いてボウィが部屋から出てきた。
「何かあったのか」
「キッドから緊急信号を受けた。今から救出に向う。ボウィは傷もある。ここに居ろ」
アイザックが慌てて言ったがキッドの非常事態にボウィがほっとける訳がなかった。
「俺ちゃんも行くぜ。二人には子猫ちゃんを相手にできないぜ。俺ちゃんの怪我なら大した事はないぜ。少し痛みはあるが子猫ちゃんぐらい操れるってもんさ」
アイザックもお町もボウィを心配したが、今はキッドの事がそれよりももっと心配だった。三人はブライサンダーに乗り込みキッドの発信した信号を追って救出 に向った。

キッドは助けが来るまでなんとか敵から身を隠していた。
「なんとも無様な格好だぜ。この木戸丈太郎が敵から身を隠す羽目になるなんて。それにしてもポヨンの奴一体どこへ消えちまったんだ」
キッドは左の肩の傷を押えながら辺りの様子を伺っていた。
「居たぞ!」
その声でまた敵達がキッドを襲って来た。
「ちぇ、ついてねぇぜ。まあ皆が来るまで一丁暴れてやるか」
負傷しているとはいえキッドの銃の腕前は素晴らしかった。
「ほ〜ら。あんた達には俺は倒せねぇぜ。主役っていうのは死なないんだよ!」
キッドは絶対絶命にもなりながらもいつもの調子の軽いノリで敵を打ち倒していた。しかし傷を負っているせいもありキッドの体力は限界に達していた。さっき まで余裕の顔をしていたが、どうやら苦しい表情になってきているのがキッド自身も感じてきた。
「くそ!俺らしくねぇぜ。しかしまだ敵がいやがる。一体こいつらはどっから湧いてでるんだ。お前らみたいな雑魚に用はねぃんだよ。とっとと消え去りな」
苦しいながらもいつもの自分らしさを取り戻そうと必死になるが、それが反って自分の破滅を意味しているようでキッドはいつもになく焦りを感じてきた。
「畜生!」
そのときキッドの背後から銃を突きつけられた。
「ここまでだJ9!銃を捨てろ。お前一人でよくここまでもったもんだ。さあ観念しろ」
「ちぇっ、観念なんてする様じゃねぃぜ」
キッドが銃を手から離した。周りは銃先をキッドに向け取り囲んだ。キッドは両手を上にあげて片方の口元を斜に上にあげにやりと笑った。
「往生際の悪い奴だ。覚悟しろ」
そして銃の放つ音が聞こえたかと思うと、キッドではなく銃を向けていた敵が倒れこんだ。キッドもすぐに銃を拾い周りの敵を次々に撃った。
「あ〜ら、キッドもう少し遅かったら蜂の巣になるところだったわね」
お町がウインクしてキッドに話しかけた。
「いいタイミングで来てくれたぜ。やっぱりカッコイイ男の演出はこうでなくっちゃね」
さっきまで焦っていたことはどうしても知られたくなかったので一応余裕の表情をしてごまかすキッドであった。
「あ〜ら、無理しちゃって。素直に喜んだらどうなの。この色男」
キッドとお町がいつもの調子で語り合っていたがアイザックの表情は厳しかった。
「キッド、単独で行動してこの有り様だ。一体何を考えている」
キッドは母親から叱られたような気持ちになって気まずい顔をした。
「すまねぇ、ボウィの帽子を探しに来たらこういう事になっちまった」
それを聞いていたボウィは怒った。
「ばっきゃろー! 俺ちゃんの帽子ごときに命を落しそうになるなんて。何考えてるんだ」
それを聞いたキッドはむかっとした。
「おいおい、最初に帽子で命を落しそうになったのはボウィだぜ。夢でうなされてるくらいだから訳ありだと思ったんだよ」
「ああ、お二人さんとにかく続きはJ9基地でどうぞ。それにキッド、ボウィがどうしてあの帽子にこだわっていたか知ったらもっと怒りの炎が燃え上がるかも よ」
そこへポヨンが皆の前に現れた。
「ポヨン、お前どこへ行ってたんだ」
「ポヨン・・・ポヨン〜」
キッドの顔を見つめながらポヨンは甘えた声を出した。そして後ろに隠していたものをボウィに手渡した。
「俺ちゃんの帽子!」
「ポヨ〜ン、ポヨン」
ポヨンも何か言いたげそうにはしゃいだ。
「ポヨン、お前やるじゃねぇか」
キッドがそう言うと、ポヨンはキッドの左肩に飛び乗った。
「馬鹿!ポヨン、そっちは痛いんだよ。降りろ」
「ポヨ〜ン、ポヨ〜ン」
ただはしゃぐポヨンだった。

一同がJ9基地に戻るとメイとシンもポヨンの姿を見て喜んだ。
「ポヨン、おいらてっきりキッドに殺されたかと思って心配してたんだぞ」
シンからそう言われキッドは憤慨した。
「なんだよシン、その言い方」
いつもなら危機を脱した後の笑い話で心が和む瞬間だがアイザックが鋭い声でキッドとボウィを呼んだ。
「キッド、ボウィ話がある」
その声から叱られると二人は思った。お町も肩をすくめてやばいときにする表情をしながら二人に同情した。

「いいか、今回は勝手な行動が引き起こした結果だ。二人とも命を落しかねなかった。代償として今回の分け前は無しだ。反省して欲しい」
「ええ、そんな」
アイザックの分け前は無しの言葉に二人は愕然とした。しかしアイザックにとって二人が心配でこれを肝に命じて行動してほしいと言う意味を込めてのことだっ た。リーダーとしては必要な注意であった。
「キッド、迷惑かけちまったな。すまなかった」
ボウィがしょんぼりとした口調で言った。
「いいってことさ。俺が勝手にした事だし、ボウィには関係ない。それにその帽子、理由はなんであれ大切な代物なんだろ。戻ってよかったじゃないか」
「キッド、ありがとう」
「俺にはわかるぜ、他の奴には理解できないかもしれないけど自分でこだわってる大切なもの。俺だってそんなもの一杯持ってるぜ。まあ今回の事は気にすんな ボウィ。でも貸しと言うことで後でなんかで返してくれよ」
「ひえ〜、気にすんなっていいながら後で返して欲しいだなんて。キッドもがめついぜ」
「ば〜か! それぐらい気にとめておけ」
二人は喧嘩をするどころか笑いながらそんな会話をしていた。
「あら〜男同士っていいわね。命が危なかったのに最後は笑って楽しんじゃって」
お町は少し二人の仲が羨ましく思えた。

ある日、ボウィがレーサー関係の雑誌を読んでいるとき後ろからキッドが声をかけた。
「よっ、ボウィ何を読んでるんだい」
その声にボウィはびっくりして雑誌を咄嗟に隠そうとした。
「おいおい、何もびっくりすることないじゃないか。雑誌を隠そうとするなんてなんか怪しいぜ。もしかしたらいやらしい本でも見てたのか。それなら俺にも見 せてくれ」
キッドがその雑誌を取り上げるとボウィは慌てた。キッドはパラパラと雑誌をめくったが何もいやらしい写真はなかった。時々ハイレグのレースクィーンが小さ く写っていたが隠すほどのものではなかった。
「キッド、返してくれよ」
「何も隠す程のものじゃないじゃないか・・・」
とキッドが言い掛けたとき雑誌からボウィと同じ帽子を被っている男性の写真が掲載されているのを見つけた。
「あ、この帽子ボウィのと一緒じゃないか」
キッドがその記事を読むと声を出して驚いた。
「え、この帽子が500万ボール! 嘘だろ」
「キッド、返せよ」
そう言ってボウィは雑誌を取り上げた。キッドはボウィの帽子を見つめながら呟いた。
「500万ボール・・・」
「この帽子はそんな価値じゃねぇよ」
ボウィがそう言うとキッドも納得した。
「そうだよな、それがその写真に載ってる本物じゃないしそんなにする訳ねぇもんな」
「それがこの帽子は雑誌に載ってる本物さ。しかし俺にはそれ以上の価値なんだよ。プライスレスさ」
「なんだって、その帽子がこの雑誌に載ってるのと同じもの!?」
その言葉にキッドは驚いた。
「俺がまだガキだった頃、このレーサーは神様と言われる程の存在だった。そのレーサーから貰ったんだよ」
「わお、すごいお宝」
しかしどこか悲しそうな顔をするボウィの表情にキッドは何か感じた。
「なんかいいたくない事でもあるみたいだな」
その言葉にボウィはふっと息を吐いたかと思うと少し微笑んだ。
「まあ何か意味ありげっていう事さ。男には人には話したくない秘密があった方がかっこいいだろ」
「ちぇっ最後はやっぱりカッコつけですか。でもボウィ、社会の窓が開いてますぜ」
ボウィがびっくりして覗き込むとそんなことはなかった。
「キッド、このパンツはそんなもの最初からついてないじゃないか。やったな」
「ははは、でもボウィのパンツさ、靴脱ぐときどうすんだい。なんか一緒になってるしさ。全部脱ぐのかい」
「そういうキッドさんだってトイレで座る時は全部上から脱ぐのかい。全部繋がってるようだけど」
「うっせい!」
シリアスな話になったときの二人ほど余計に茶化し合う度合いが高くなる。ボウィの帽子にはまだ誰も知らない秘密がありそうだがキッドは敢えて聞かなかっ た。ボウィが話したくなったときキッドは耳を貸してやろうとそう思った。そんな二人の茶化したやり取りはJ9基地では必要なものの一部とすでになって二人 の熱い友情でもあった。

訳ありの男のこだわりは
時には命を落す羽目になりながら
それでも守りたい時がある。
それを理解してくれる奴が側にいるならば
いつまでも大切にすべき友である。
キッドとボウィの友情は
声に出さずともはっきりと目に見えるこだわりなり

おわり


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