6創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

『秘めた碧い炎』

「まただわ」
お町が新聞の記事を読みながら呟いた。
「何がまたなんだい?」
ボウィが興味を持ってお町の側に近づいてきた。キッドはその側で腕を組んで椅子に座って二人の様子を見ていた。
「怪盗ブルーよ。今話題になってる泥棒なの。芸術のようにその盗みの腕はすごいらしく未だに何もブルーの情報が詳しくわからないの。盗人なのに結構ファン も多くてアステロイドの女性は勝手に偶像化してアイドルのようになってるの」
お町は説明した。
「で、結局何がそんなにすごい奴なんだ。銃の腕が俺より上手いとか、何か特技があるのか?」
キッドが聞いた。
「それがこだわりの泥棒で青が関係しているものしか盗まないの。しかもその盗みの手口はイリュージョンのように芸術並みらしいわ。実際に私が見た訳じゃな いからどんなにすごいかわからないけどね。」
「へ〜それで怪盗ブルーって名前がついたのか」
ボウィが言った。
「ふーん、俺はそんなの興味ないね。俺よりも銃の腕がすごいならちょっとライバル意識も芽生えるけど、ただの手品師の盗人だろ。関係ねーや」
キッドはその話に興味がなかった。
「で、お町さんも怪盗ブルーのファンなのかい?泥棒なのに女の子に持てるって俺ちゃんちょっと焼いちゃうね」
「まあ、かっこいい男ならちょっとは興味があるかもね。心を盗まれてみたいわね」
「あら、俺ちゃんだって車を転がしたら芸術並みだぜ。なんで俺ちゃん女性にモテないんだろう」
ボウィが嘆きながら言うとキッドは鼻で笑いながら答えた。
「ボウィはいやらしさがにじみでてるんだよ。それじゃ女の子は寄ってこないぜ」
「あらららら、キッドさん言ってくれるじゃない。喧嘩売ってくれちゃって。そりゃキッドさんはモテますよ。でも折角寄って来ても相手にしなけりゃ宝の持ち 腐れだぜ。結局は自信がなくて女性に臆病になってるだけじゃないの」
「なに〜!」
ボウィとキッドはちょっと喧嘩腰になってしまった。二人がいがみ合っているとお町が仲裁にまわった。
「ちょっとあんた達、そんなことでいがみあってどうするの」
そこへアイザックが入ってきた。
「ポンチョからコール信号が入った。依頼人と今こちらに向っているらしい」
部屋に入るなりボウィとキッドはお互い今にも飛びかかろうとしている様子だったのでアイザックが鞭で二人の足下を打った。驚いた二人は咄嗟に抱き合ってし まった。それを見ていたお町が言った。
「あんた達お似合いのカップルね。それじゃ女の子達が誤解して寄りたくても寄ってこられない訳ね」
ボウィとキッドは顔をお互い見つめてはっとして急に離れてしまった。
「ひえ〜やめてくれ」
キッドはブルブルと体を震えさせた。
「俺ちゃん達マジで誤解されちゃってるのかな」
とんでもないという顔をしてボウィは嫌がった。アイザックはクスッと笑っていた。
「だけどアイザックって結構かっこいいのにあまり女性の話を聞かないわね」
お町が急にアイザックに向って言った。
「なんの話だ」
アイザックはあまりそういう話題は気に入らなかったので睨みをきかした。
「そうだよな。アイザックのあまり浮いた話は聞かないよな」
キッドは不思議がった。
「アイザックは彼女とかいないのかい」
ボウィが聞くとアイザックはまた鞭を振り回した。思わずボウィはたじろいで、キッドも触らぬ神に祟りなしだと思って何も言わなくなった。

ポンチョが依頼主を連れてJ9基地へ入ってきた。
「お待たせしましたでゲス。こちらが今回の依頼主のトーマスさんでゲス。美術館のオーナーでゲス」
「それで依頼とはなんでしょうか」
アイザックが聞いた。緊張した面持ちで汗を拭いながらトーマスは話し出した。
「今話題の怪盗ブルーの話はご存じでしょうか。実は怪盗ブルーから私の美術館に展示しているブルーダイヤモンドを盗みにくると犯行声明が入りました。それ をJ9の皆さんに守って頂きたいのです」
その話を聞いたお町はちょっと興奮した。
「あら〜タイムリー。是非怪盗ブルーに会ってみたいわ。ねえアイザック受けましょうよ」
アイザックは考えるように黙っていた。
「ちょっと、お町さん、これは遊びではないでゲス。怪盗ブルーは今まで盗みに失敗したことがないでゲス。警察もそれを阻止できないので今回J9の皆さんに 守って欲しいのでゲス」
ポンチョは少し困り顔で対応した。
「お願いします。是非このブルーダイヤを守って下さい。このダイヤは持ち出されると非常に困るのです。ダイヤには呪いがあると噂され、これを手にするもの はその呪いで死に至るとされてるために持ち主が無償で私の美術館に展示して下さってます。このダイヤを見ようと人々が集まって来るので私の美術館は経営が 成り立ってます。もしこれが盗まれてしまうと持ち主に申し訳ないのと、美術館の経営が成り立たないので是非皆さんに守って頂きたいのです」
トーマスが懇願するように訴えた。
「そうなんでゲス。依頼金は500万ボールでゲス。J9の皆さんお願いしますでゲス」
「ちょっとまった。なんでそんな危ない呪いのダイヤなんか怪盗ブルーが欲しがるんだ」
キッドが不思議がった。
「そうだよな、手にするものに死を至らすなんて、そんなもの欲しがる理由がわからないぜ」
ボウィもやっかいな事に巻き込まれたくないとでもいうように言った。アイザックは何かを考えていた。
「だけど、怪盗ブルーは青いものを集めているコレクターでしょ。それにそのダイヤに本当に呪いがあるなんて信じてないんじゃないの。とにかく私はこの仕事 に乗ったわ。怪盗ブルーに会えるチャンスなんですもの。なんかわくわくしちゃうわ」
お町の言葉に皆呆れていた。
「もう、理由はどうであれ、J9の皆さんどうか頼みますでゲス」
キッドもボウィも怪盗ブルーのせいでちょっといがみ合ったのでどんな奴か少し見てみたくなった。
「俺も乗ったぜ」
「俺ちゃんもだ」
アイザックは依頼主を見た。
「わかりました。依頼をお受けしましょう」
依頼主は怪盗ブルーの犯行声明の紙を見せた。そこには日時とブルーダイヤを頂くという言葉が印されていた。しかし怪盗ブルーという名前はどこにも入ってな かったが何かを型どった絵のようなものが描かれていた。
「この印は?」
アイザックが不思議がったのでトーマスは説明した。
「これが怪盗ブルーのマークです。怪盗ブルーは勝手にマスコミがつけた名前、実際はそのような名前ではなくこのマークがつけられています。これで怪盗ブ ルーの犯行声明だとわかるのです」
アイザックはその模様を暫くじっとみていた。
「それではこの犯行声明の日に美術館でお会いしましょう」
アイザックはトーマスと握手をして別れた。

「なんかわくわくしちゃうわ今回のお仕事」
お町はすっかり怪盗ブルーをアイドルのような存在としていて犯行声明の日が楽しみだった。
「今回の仕事はブルーダイヤを守ればいいだけだろ。簡単だぜ。俺の銃の腕を見せ付けてやる」
キッドは怪盗ブルーに負けたくないとでも言わんばかりに自分の銃を取って射つ真似をした。
「どんなイリュージョンを使うのかお手並み拝見しちゃおうじゃないの。もし逃げたら俺ちゃんが子猫ちゃんでどこまでも追い掛けて逃げられないことを証明し ちゃうもんね」
ボウィもどこかライバル意識を持っていた。
「お前達、いいか簡単な仕事でも命がけな事を忘れるな。怪盗ブルーは危険人物かもしれない。くれぐれも油断するな」
アイザックは皆に渇を入れた。

犯行声明の当日J9のメンバーはトーマスの美術館に足を踏み入れた。念のため警察も周りを見張っていた。ブルーダイヤが展示されている大きな空間の部屋に 行き、そこで呪いのブルーダイヤを四人は見つめていた。
「これが例のブルーダイヤね。美しい輝きだけど本当にそんな呪いがあるのかしら」
お町は触りたそうにしていた。
「おいおい、お町、触れるなよ。呪いにかかるかもしれないぜ」
キッドは心配した。
「触るだけでしたら呪いはかかりません。それを所有したときに持ち主は死に至るといわれております。今までこのダイヤを所有した人達はそれぞれ謎の死をと げてきました」
館長のトーマスが後ろから声をかけた。
「だったらなぜ今の持ち主には呪いがかかってないんだい」
ボウィが聞いた。
「それはこのダイヤが側にあるといけないんです。所有するけれど離れたところに置いて置くとその呪いはかからないのです。だからダイヤの所有者は私の美術 館に展示をされているのです。いままでその呪いの噂があったので誰もこのダイヤを盗もうとは思いませんでした。私も安心していたのですが、怪盗ブルーがこ のダイヤに目をつけてしまって事態は最悪になりました。怪盗ブルーは盗みに失敗したことはありません。これが盗まれては本当に困るのです」
皆はそれを黙って聞いていた。アイザックはブルーダイヤをじっと見つめながらどこか不思議な光を感じていた。その光は何かを訴えているようにも見えた。

「皆、そろそろ時間だ。気をつけるんだ」
アイザックが声をかけると皆は首を縦に一降りして答えた。そして緊張した空気が走った。予告時間になろうかとしているときに美術館に一羽のフクロウが入り 込んできた。バタバタと飛んで人々の頭の上を円を描くように羽ばたいていた。思わず皆それに釘つけになったかと思うと急に電気が消え辺りは真っ暗になっ た。そして何本もの線のような青い光が交わるように慌ただしく放っていた。
「来やがったぜ」
キッドがそう言うと銃を構えた。
「ねえねえ、怪盗ブルーはどこかしら。早く会いたいわ」
「お町さん、こんなときに不謹慎だぜ」
ボウィが呆れた。
「皆いいか、ブルーダイヤから離れるな」
アイザックは暗闇の中自分の目を光らせていた。そして何かガスのようなものが部屋に充満してくるのを感じた。
「催眠ガスだ」
アイザックは咄嗟に口を押えた。しかしキッドもボウィもお町もまともに吸ってしまって眠たくなっていた。アイザックはすぐにブルーダイヤを咄嗟に掴み部屋 から出ようとした。しかし目はかすんでいた。
「あら、だめ私眠たくて立ってられない」
お町はフラフラしていた。
「くそ、ただでさえ暗闇で目がかすんで前が見えないぜ」
キッドは眠気が襲いながらも一人で怒っていた。
「うへ〜。催眠ガスなんて汚い手だぜ。これがイリュージョンなんてインチキだぜ」
ボウィも腹を立てていた。
3人は口を押えながらもなんとかこの状況に堪えようと必死だったがガスのせいで床に倒れてしまった。その時アイザックは非常口へと向っていた。そしてマス クをかぶった人影がブルーダイヤに近づくのを見た。さっきまで飛んでいたフクロウがその人影へと降立って手を伸ばした腕に止まるとアイザックは叫んだ。
「怪盗ブルー」
アイザックはとにかく部屋からでようと必死だった。怪盗ブルーは目の前にダイヤがなかったのではっとした。そして部屋を出ようとしているアイザックに目が 行き後を追い掛けた。アイザックが部屋を出ると目はかすむがなんとか眠気の危機を脱した。アイザックは美術館を出て外に出た。そして後ろから追い掛けてく る人影をじっと見つめていた。
「お前が怪盗ブルーか」
怪盗ブルーの姿は全身を紺のピッチリとしたボディスーツで覆われていた。目の部分だけが見えていた。怪盗ブルーはゆっくりとアイザックに近づいた。アイ ザックは鞭で威嚇した。しかし怪盗ブルーの動きは機敏で鞭に物怖じすることなく軽やかに宙を飛んだ。怪盗ブルーはアイザックが左手に持っていたダイヤに気 が付きその時何かを手にしたかと思うとアイザック目掛けて投げた。そしてそれは眩しい光を放ちアイザックは目が良く見えなくなってしまった。そこへフクロ ウがアイザック目掛けて頭を攻撃したので咄嗟に頭を守ろうとしたときに手が滑ってダイヤを地面に落してしまった。怪盗ブルーはそのダイヤを拾おうと機敏に 動いたがアイザックも鞭で怪盗ブルーの手を一巻きして力限り引っ張った。反抗する力が出ず咄嗟の事に怪盗ブルーは鞭に引き寄せられてアイザックの側に転げ るように近づいたかと思うと、弾みでアイザックの片腕に抱かれてしまった。アイザックの目は霞んで前が良くみえなかったので怪盗ブルーをじっとみようと見 つめた。怪盗ブルーもそんなアイザックの目に釘つけになってしまった。そしてアイザックは怪盗ブルーの柔かい体に触れて気が付いた。
「女か」
急に怪盗ブルーは焦りだしその場から去ろうと必死になった。そして鞭を腕からほどき怪盗ブルーはダイヤを取ることもなく去って行ってしまった。後からフク ロウがご主人様を追い掛けるように空高く飛んでいった。地面に落ちていた怪しく光るブルーダイヤを手にしてアイザックは怪盗ブルーの意外な正体に驚いた。
「怪盗ブルーは女だったとは」
そう一言いうと怪盗ブルーが去っていった方向を見つめていた。そしてブルーダイヤをしっかりと握っていた。

ブルーダイヤは無事に盗まれる事もなくまた美術館へと戻った。一同はJ9基地に戻ったがお町もキッドもボウィもアイザックのお陰で仕事は無事に終わったが 自分達のヘマに悔しがった。
「くそ、なんてこったい。この俺があんな初歩の睡眠ガスでやられるなんて」
キッドは怒りのあまりテーブルを拳で叩いていた
「ほんと、なんてことなの、私としたことが油断してしまったわ。怪盗ブルーの姿も見られなかったなんてなんて悔しいの」
「怪盗ブルーは汚い奴だぜ。俺ちゃんもああ悔しい〜」
ボウィも足をバタバタしていた。アイザックは一人黙っていた。
「ねえアイザック、今回はあなたのお陰でなんとか難を逃れたわ。だけど怪盗ブルーってどんな奴だったの」
お町はしつこくまだ怪盗ブルーについて知りたかった。しかしアイザックはそれに答えようとしなかった。女と知っていたのに誰にも話さなかった。
「いいかお前たち、今回は油断してしまった。なんとか仕事には成功したもののこれではJ9の恥だ。これからは気をつけて貰いたい」
アイザックがそういうと皆はしょんぼりとした。

数日後、ポンチョがお客を連れてJ9基地へやってきた。
「皆さん、こちらニューズディ雑誌の記者の方でゲス。是非皆さんの事を記事にしたいそうで無理やり案内させられたでゲス」
そこにはすらっとしたきれいなストレートの黒髪の女性がいた。
「初めまして。サファイアといいます。是非J9のご活躍の話を記事にさせて頂きたくてお願いにあがりました」
そのハキハキとした姿にキッドもボウィも魅力を感じた。
「へ〜中々の美人じゃないか」
「かわいこちゃんだね〜」
すぐに女性を見てそういう二人にお町はやれやれとでもいうような態度をしめした。サファイアはニコっとしてアイザックを見た。
「是非怪盗ブルーと対決した様子をお話してくださいませんか。怪盗ブルーが盗みに失敗したのはこれが初めてです。それを記事にしたくてこちらにやってきま した」
それを聞いたキッド、ボウィ、お町は顔を歪ませた。今までにない最悪な情けない事を体験してこの話だけは避けたかった。
「何も対決などしていない。偶然にも怪盗ブルーがダイヤを盗めるチャンスがあったにもかかわらずそうしなかっただけだ。我々は今回の事では何もしていな い」
冷たい態度でアイザックは言った。そしてサファイアをじっと見ていた。
「しかし実際ブルーダイヤは守られました。せめてあなたが見た怪盗ブルーの特徴だけでも教えて頂けないでしょうか。怪盗ブルーはどんな男なんですか」
アイザックはその一言で目を光らせた。
「すまないが怪盗ブルーの情報は何一つ知らない」
そう言ってアイザックは部屋を出た。サファイアはその後を追い掛けた。
「あの記者アイザックを追い掛けて行っちゃったよ」
ボウィが言った。
「まあ俺達は醜態をさらし出したからこの件については何も言えないしな」
キッドはため息をついた。
「私もちょっと浮かれすぎたわ。反省〜」
お町も首をうなだれた。
「ちょっとちょっと皆さんどうされたでゲスか。いつもの皆さんらしくないでゲス。なんか暗いでゲスね」
ポンチョは3人の様子が変だったので不思議がった。

「待って下さい」
サファイアがアイザックを追い掛けて呼び止めた。アイザックはサファイアを振り返った。
「申し訳ないが何も話すことはない」
「どうして何も話すことがないのでしょうか。いえ、話さないのでしょうか。あなたは怪盗ブルーの正体を知っているのにそれを言わないのはなぜですか」
アイザックはそれを聞いて目を細くして光らせた。
「どういう意味ですか」
「だからあなたは怪盗ブルーが女だと言うことを知っているのに誰にも話さないのはなぜか聞いているのです」
その言葉を聞いてアイザックははっとした。アイザックはサファイアの目を見つめた。サファイアもまたアイザックの目をじっと見つめていた。じっと見つめる サファイアの目にアイザックは見覚えがあった。
「まさか君は」
「そうです。私が世間で噂されている怪盗ブルーです」
サファイアはにっこりとした。
「ここへは何の用で来たんだ。失敗への復讐か」
「違うわ。あなたに会いに来たの。あなたは私が女であることを知っていたのに誰にも言わなかったのが不思議だったの。なぜ誰にも私の情報を言わなかった の」
サファイアはじっとアイザックを見つめていた。
「君が青いものしか盗まないと言うところと声明犯行に印されているマークに意味があると思った。そしてそれはただの盗みを働いているとは思えなかったから だ。私は君の正体を公に知らせる義務は全くない」
その言葉を聞いてサファイアは笑みをこぼした。
「ありがとう。全くあなたの言う通りよ。私は意味もなく盗みを働いている訳ではありません。私が青いものばかり狙うのには訳があります。その青いものは私 の種族が生み出した芸術作品だからです。私の種族は迫害されて国を持たないジプシーとなりました。そして財産や芸術品までも奪われてしまいました。それを 私は取り返しているだけです。たまたま青いものなのは種族が残したものにそういう青い部分が特徴とされたものが残っているからです。青は私の種族のシンボ ルカラーなのです。そしてブルーダイヤは昔種族が持っていた神殿の守り神としてまつられていました。しかし盗まれてしまい呪いだけが一人歩きをして今のよ うな噂が流れたのです。私達種族が持ってこそその意味は成し遂げられ呪いどころか幸福をもたらしてくれるものなのです。ブルーダイヤは本来あるべきところ に戻さなくてはなりません。しかし今回あなたに阻止されてしまいました」
アイザックはじっとその話を聞いていた。
「お願いです。どうか次回私が声明犯行を出すときにあなたに邪魔をして貰いたくないのです。その事をお願いしたかったのです」
するとアイザックはおもむろにポケットから何かを取出した。それはブルーダイヤだった。サファイアは驚いた。
「なぜあなたがそれを持っているのですか」
「実はあのマークを見てあなたが特別な種族だと既に気が付いていた。そしてこのブルーダイヤを手にしたとき私は声を聞いたように感じた。まるで生き物のよ うに『戻りたい』と言っているようだった。私がブルーダイヤを手放そうとするとその声は一層強く聞こえるような幻覚を味わった。すると手放してはいけない ように思えて予め用意しておいた偽物とすり替えたのだ」
アイザックはそのブルーダイヤを渡してやった。
「ありがとう。そう言えばお名前まだ聞いてなかったわ」
「私はアイザックだ」
「アイザック、あなたって最高の泥棒ね。だって二つのものを盗んだんですもの」
「二つのもの?」
「ええ、一つはブルーダイヤ、そしてもう一つは私の心よ。あなたにあの時偶然にも抱かれてしまってドキドキしてしまったわ。それ以来私は・・・」
サファイアはアイザックを見つめていた。アイザックは何も言わなかった。
「お返しに今度は私があなたから盗まさせて頂くわ」
サファイアはそう言うや否やアイザックの唇に自分の唇を重ねた。アイザックは驚いたが拒む事もなかった。むしろ受け入れた。そしてサファイアはもう一度ア イザックを見つめて何も言わずに通路を歩いて行った。アイザックもその場でじっと立ってサファイアの後ろ姿を見ていた。そしてサファイアはJ9基地をポン チョと去っていった。

「ねえねえ、アイザック。私達には教えてよ。怪盗ブルーってどんな男だったの」
お町はどうしても聞きたかった。
「皆が想像するような奴ではなかったのは確かだった」
「なんだよそれ、それって不細工な奴ってことか」
キッドが言った。
「結局は想像だけが一人歩きしてたのね。なんか俺ちゃん安心した」
ボウィも大した男ではなかったと思ってほっとした。
「ただ盗みは上手かったことは頷ける奴だ。怪盗ブルーが私に近づきすぎたら私からもいずれ何かを盗んでしまっていたかもしれない」
アイザックはどこか微笑みながらそう言った。
「アイザックからも盗むって、アイザックそんなに盗まれる程貯金もってるのか」
キッドが言うとボウィも言った。
「アイザック、お願いちょっと金貸して。俺ちゃんどうしても欲しいものがあるの」
「アイザックからものを盗もうとするなんてよっぽどの腕がないとできないわ。だってアイザックには隙がないんですもの。そうしたらかなりの凄腕なのかも ね」
お町が言った。アイザックは肘をテーブルにつき軽く人指し指で自分の唇に触れていた。すでにもう盗まれたものがあったことは3人には言えなかった。またそ れが嫌なものでもなかった自分に少し驚きを隠せなかった。
「怪盗ブルーか」
そう呟きながら宝石と同じ名前のサファイヤを思い出し、碧い美しい輝きに魅了されている自分を感じていた。

青い色には意味がある
青い光の導く先を見つめると心落ち着く
そのまま眺めていたくとも
どこかで振りきる自分の姿
しかし今日は素直に受け入れてみようではないか
それがまた心地良いと多少驚くのも悪くはない
密かに心に灯せ蒼い炎

おわり


Index / HOME

inserted by FC2 system