4創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

『流星群の涙』

メイとシンが何やら二人で話している。
「たまには素敵な所へ旅行に行ってみたいわ」
「おいらは思いっ切りスリリングに遊べる所へ行ってみたい」
談話室に入ろうとしていたアイザック、ドアの外から二人の話を聞いていた。二人の親代わりを努めるアイザックだけに子供だけどもしっかりとJ9の役割を 担ってる二人に何かしてあげたくなった。そこで地球に旅行にすることを計画し、メイとシンを連れて自分も休暇を取るのも悪くないと思った。

「え、メイとシンを連れて旅行に行く?」
ボウィが言った。
「へぇ、それでどこへ行くんだい、アイザック」
足をテーブルに置き銃の手入れをしながらキッドは言った。
「地球だ。ちょうど流星群が見られる時期だ。地球から流れ星を見るのもたまにいいだろう」
「あら、おしゃれじゃない」
お町が言った。
「どうする、お前たちも一緒に来るか」
アイザックは皆も誘った。しかし皆は折角の休暇なら他にやりたい事があるとでもいわんばかりに遠慮した。

アイザックは舟をチャーターしてメイとシンを連れて地球へと向った。
「アイザックさん、ありがとうございます。私とっても嬉しいわ」
「おいらも」
メイとシンはお礼を言った。
アイザックたちが着いたところは中世の雰囲気が漂うお城がある所だった。自然に囲まれたホテルにチェックインするアイザック。しかしどこからか視線を感じ る。その感じる方向を見てみればそこにはアイザックを見つめる女性がいた。アイザックが見つめ返すと女性は慌てて目をそらした。アイザックは別に気にも留 めなかった。

ホテルの部屋は豪華でメイとシンは喜んだ。アイザックは別の部屋を取り窓から外の風景を見ていた。そこには男と女が何か口論している姿が見えた。男の方は 怒って女を置き去りにした形で去っていった。その女を良く見ればさっき自分を見つめていた女だとアイザックは気が付いた。女は森の中へと足を運んで行っ た。

「アイザック、このホテルにプールがあるんだって。でっかい滑り台もあるんだぜ。おいら姉ちゃんと泳いで来る。アイザックも一緒に行こう」
シンが誘ったがアイザックは笑いながら断った。
「私はこの辺りをまず散策して来る」
「それじゃ夕飯の頃までおいら達泳いでるね」
シンは楽しそうでたまらない様子だった。アイザックもそれを見ていて微笑ましく思った。

アイザックはホテル周辺を歩いていた。森に囲まれ久し振りに緑の中で歩くのは気持ちが良かった。鳥のさえずりに葉と葉のかすれた音、そして木漏れ日と宇宙 の中で過ごしてばかりのアイザックにとってこの環境は久々のリラックスした気分だった。心地よい緑と澄んだ空気の中でただ歩いていると何もかも忘れそうに なった。

「やはりあなたなの?」
突然アイザックに声をかける女性がいた。それはさっきアイザックを見つめていた女性だった。アイザックは何も言わずただその女性を鋭い目で見ていた。
「なぜすぐに会いに来てくれなかったの」
その女性は栗色の長い髪を風になびかせながらアイザックを悲しそうに見ていた。
「申し訳ないが人違いだ」
アイザックはその場を去ろうとした。
「待って」
女性は引き留めようとした。そこへ女性を探しにさっき口論していた男が現れた。
「ジェニファー、探したよ。さっきはごめん」
そして男はアイザックの姿を見て恐怖におののいたような顔をした。アイザックは自分が誰かと間違えられているのが分かったがここは何も言わない方が良いと 思いそのまま二人の前から去っていった。
「いかないで」
女性が後を追い掛けようとしたが男がそれを阻止した。アイザックは自分に似た男が居て勘違いされているのだろうと思ったが折角の休暇を邪魔されたくなくて 関わりを持ちたくなかった。そのまま森の中を歩いていき、森を抜けたところにこじんまりとしたお城を見つけた。ここの観光名所かと思ったが誰かの所有物ら しかった。アイザックがそのお城を見ていると年老いた男が驚きながら声をかけた。
「ジーク様」
さっきの男女といい、この老人といい、アイザックは自分にそっくりな人間がここにいるのを確実に感じた。一体自分に似た男がどんな奴なのかアイザックは少 し興味をもった。アイザックが何も言わないでそこに立ったままでいると老人はにっこりとして言った。
「相変わらず無愛想ですね。ジェニファー様にはもうお会いになられたんですか」
アイザックはすっかり間違われてしまったと思った。ジェニファーと聞いてさっきの女性がそうだと思った。
「すまないが、人違いだ。私はアイザックという。ジークという男は私に似ているらしい」
それを聞いた老人は少し微笑んでこの世の中にそっくりな人間がいるものだなと思った。
「そうですか。人違いですか。それは失礼しました。しかしあまりにも良く似ていらっしゃる」
「そのジークという男はどんな男だ」
アイザックは自分にそっくりと聞いてどんな男か知りたくなった。
「それはそれは頭の切れる優秀なお方です。人間付き合いが苦手なのかあまり人と関わりを持つのを嫌がる人なんですが、ジェニファー様だけには違っておりま した。ジェニファー様というのはジーク様の恋人でいらっしゃいます。いらっしゃいましたと言う方がいいかもしれませんね。今はアーロン様とご一緒ですか ら」
アイザックはそれを聞いてさっきの男がアーロンだと思った。
「ジークは一体どこにいるんだ」
「それがもう1年程前から行方がわからないんです。どこかへ旅に出たという噂も聞きましたが恋人のジェニファー様にも何も告げずに突然姿を消されてしまっ た」
アイザックは何か訳ありだと思いながら聞いていた。
「ここはジーク様のお城なんです。私はずっとジーク様に代ってここを守り続けてきました。ジーク様の肖像画もあります。一度ご覧になられますか。そしたら どれだけあなたにそっくりか分かってもらえると思います」
アイザックは肖像画と聞いてどれだけ自分に似ているのか見たくなった。そして老人に案内されお城の中に入っていった。アイザックが城に入って行く様子を遠 くから見ているものがいた。さっきの男、アーロンだった。

城の中は殺風景だったが、所々家宝と言われるようなものが置いてあった。老人は居間の暖炉の上に飾られている肖像画をアイザックに紹介した。アイザックは 驚いた。髪型は違うがまさに自分がそこにいるようだった。
「ね、そっくりでしょ。髪はあなたより短いですけど」
アイザックはこれなら間違えられても仕方ないと思った。
「確かに似ている。しかし私は別人だ」
アイザックは肖像画をじっと見ていた。そしてその肖像画の右手の薬指の指輪に目が行った。金色で幅は太くいくつも小さなダイヤモンドのような石が星のよう にちりばめられていた。そして暖炉のマントル(*棚のようになっている部分)に沢山のピンポン玉くらいのサイズの丸いものが埋め込まれているのにも気が付 いた。それは星を形どっているようにも見えた。
「ジーク様は星が好きでした。いつも夜空を見つめてはいつか宇宙で住んでみたいとおっしゃられてました。しかし代々伝わるこのお城を守らないといけないた めにどこへも行くことができませんでした。ジーク様は価値のないお城だと思っていましたが、じつはこのお城には隠された財宝が眠っていると私は聞いた事が あります。それを話すとまさかとは笑ってましたが、そういう事もあるので私はジーク様が戻ってこられるまでここを代りにお守りしている訳です。私の祖先も またジーク様の祖先に仕える身でしたから」
アイザックはこの自分にそっくりな男が一体どこへ消えたのか気になりだした。どこか何か事件に巻き込まれたのではと思わずにはいられなかった。そして森の 中でアイザックの顔を見たときに恐れるような表情をした男、アーロンが何かジークの失踪に関係しているのではないかと直感で感じた。アイザックがその城を 出たとき少し離れたところに別の建物があることに気が付いた。それは高くそびえ立つ筒のような形の搭で屋根は三角錐のコーンのようにとんがっていた。その 近くに井戸があった。
「ああ、あれは今では倉庫みたいなものです。ジーク様がいらっしゃった時は趣味のお部屋で天体望遠鏡で宇宙を見ていたりされてました。もしジーク様がい らっしゃったらあそこから流星群をきっとご覧になられたことでしょう。知っておられますか、今夜から夜明けあたり沢山の流星群がこの辺りで見られるんです よ」
「ああ、私もそれが目的でここへやってきた」
老人は搭を見つめるアイザックをじっと見ていた。アイザックは老人に別れを告げ城を去った。そしてまた森を抜けてホテルに戻ろうとした。

「ジーク。やっぱりお前なのか」
そう言ったのはさっきのあの男だった。
「アーロン」
アイザックはつい男の名前を言ってしまった。
「やはりジークなんだな、生きていたのか。今頃現れて俺に復讐しにきたのか」
「すまないが、本当に人違いだ。君の名前はさっきあの城の老人から聞いて知っていたんだ」
アイザックはこの勘違いを訂正しようとした。しかし復讐という言葉がどこか引っ掛かった。
「私はアイザックと言う。ジークとは全く別人だ」
「何を今更とぼけたことを。ジェニファーは絶対に渡さない。ジェニファーに近づくな」
そう言ってアーロンは去っていった。アイザックはアーロンから完全にジークと間違われてしまった。

「アイザックさん。どこへ行ってたんですか。私達お腹ペコペコ」
「おいらも」
メイとシンがアイザックの帰りをホテルの外で待っていた。
「お前たち、プールはどうだったんだ」
メイとシンは他の泊まり客の子供達と一緒に遊んだことなど楽しかったとアイザックに報告した。そして明日は遺跡巡りのツアーに参加したいと言うとアイザッ クはなんでも好きなようにしろと二人に言った。三人はレストランに行き食事をしようとした。そこへあの女性、ジェニファーがアイザックに話したそうに現れ るとメイとシンは顔を会わせて何かに気が付いたように言った。
「おいら達で食事をするからアイザックも楽しんで」
「私達の事は心配いらないからアイザックさんも久し振りの休暇ゆっくりしてね」
そう言って二人だけでテーブルについた。

「アイザック?」
ジェニファーがそう言った。
「ちょうど良い機会だから誤解を解くためにもあなたと話をしたい」
アイザックはジェニファーと外へ出た。
「私はアイザック・ゴドノフと言う。ここへは初めて来た。ジークという男ではない」
ジークという名前を知っていたのでジェニファーは驚いた。
「あなたはジークをご存じなんですか」
「城の老人にジークの事を聞いた。私も肖像画を見せて貰ったが君たちが間違えるのは無理もない。本当に私に良く似ていた」
ジェニファーはきょとんとしていた。その時ジェニファーの胸元のボタンをかけてないシャツの辺りからキラリと光るものを見た。それは肖像画で見たものと同 じジークがつけていた指輪が見え隠れしていた。
「その指輪はジークの」
アイザックはつい聞いてしまった。ジェニファーは胸元を手で押えながら言った。
「そうです。これはジークから貰いました。ジークの家で古くから受け継がれている指輪だそうです。でも私の指には大きすぎてこうやってネックレスとして身 につけています。なぜこの指輪の事をご存じなんですか」
ジェニファーはジークにそっくりな男が指輪の事まで知っていたので不思議な感覚が襲いやはりジークではないかと思えて仕方なかった。
「肖像画を見たときに彼の指にあったものですから、印象深くて覚えていました」
「ジークはこの指輪を私にくれた後に突然姿を消しました。私には何か事件に巻き込まれたのではと思えて仕方ありません。ジークは人付き合いは苦手な人でし たが私だけにはとても優しく愛してくれました。彼が私に何も言わないで姿を消すなんて考えられないのです」
それを聞いてアイザックはアーロンが言っていた『復讐しにきたのか』という言葉を思い出した。
「アーロンとはどういう関係なんですか」
「アーロンは私の幼なじみです。このホテルの経営者、正確には後継者と言った方がいいかもしれません。今はまだお父上が経営してますから。でもなぜアーロ ンの名前までご存じなんですか」
ジェニファーはどうしてもジークが他人のフリをしているとしか思えなかった。
「大体の話を城の老人から聞いたものですから職業上気になってしまいました」
「職業上気になる?お仕事は何をなさってらっしゃるんですか」
「アステロイドあたりで人から頼まれた事を色々とやってます。行方不明者を探すこともあるのでつい気になってしまいました」
アイザックはまだ地球ではJ9の噂は届いてないと思った。
「そうですか。それならジークを探して頂けないでしょうか。依頼料はおいくらなんでしょうか」
「申し訳ないですが、今休暇でこちらにきてます。それに私の仲間もいませんのでお断りさせて頂きます」
「それは自分がジークだから探す必要がないんじゃないのか」
後ろから声がした。それはアーロンだった。
「言っただろ、ジェニファーには近づくな。お前はジェニファーから去って行った男だ。戻ってくる資格はない」
「アーロンやめて」
「ジェニファーなぜ言わない、オレ達は来月結婚することを」
アイザックは益々話がややこしくなってきたと思った。いくら自分が人違いだと言っても信じて貰えそうにないと思った。アイザックはここはジークのフリをし た方が何か真相が掴めると突然思った。

「どうも嘘を突き通せないようだ。そうだ私がジークだ」
アイザックはそのように言うとジェニファーもアーロンも驚いた。ジェニファーはアイザックに抱きついた。
「やっぱりそうだったのね。戻ってきてくれたのね。今までどこに居たの。なぜ嘘をつく必要があったの」
アーロンはその場に立ち尽くし真っ青な顔をして動けなくなった。ジェニファーはアイザックの手を取って森のなかへと引っ張っていった。
「さあジーク行きましょう。今日は流星群が見られるわ。あなたのいつもの部屋で星を見ましょう。そしてゆっくりと話して頂戴今までどこにいたのか」
そう言ってジェニファーが連れて来たところはお城の隣にある搭だった。ジェニファーは鍵を持っていた。
「あなたがくれた合い鍵よ。今も大切に持っているわ」
ジェニファーに引っ張られるままにアイザックは搭の上へと登った。一番上の部屋は勉強部屋のごとく星を観測する機材や望遠鏡、そして宇宙を思わせるような ペイントが天井や壁にしてあった。
「昔私達はここでよく星について語り合ったわね」
アイザックは窓から外を覗いた。そろそろうっすらとまだ明るい空だったが星がいくつかもう見えていた。アイザックが塔の窓から顔を出している姿をお城から あの老人が見ていて驚きの表情をしていた。
「ジーク様。まさか」

アイザックが部屋の様子を見回していたら床にシミのような後が広がっていた。それは血が流れた後のようにも見えた。
「ジーク、なぜあなたは突然姿を消してしまったの。今までどこに居たの」
「ジェニファー、私は・・・」
アイザックが言いかけたときドアが急に開いた。アーロンだった。
「ジーク、やはり私に復讐をしに来たんだろう。あの時俺はカッーとなってここでお前の頭を殴った。ジェニファーがお前に惚れているのが許せなかった。そし てあの時動かないお前を見て俺は殺してしまったと思った。しかし次の日様子を見に来たらお前の姿はなかった。生きていたんだな。なぜだ。なぜ今頃になって 現れたんだ。あともう少しでジェニファーと結婚できるというこの時期に」
アイザックはアーロンが自分を見て恐怖におののいた顔をした理由がやっとわかった。ジェニファーはショックを隠せない顔をしながらその場で立ちすくんでい た。しかし話のつじつまが合わない。アーロンがジークを殺していたのならなぜ様子を見に来たときジークの死体がそこになかったのだろうか。アイザックは考 え事をしていた。
「アーロン、君がジーク、いや私を殴ったときだが、血は出ていたのか」
アイザックが落ち着いて聞くのでアーロンは訳がわからなくなってしまった。
「お前、何を聞くんだ。気は正気か」
「いいから答えたまえ。血は出ていたのか」
アイザックの落ち着いた質問がアーロンを余計に怖がらせてしまった。
「いや、血は出ていなかった」
アーロンは怖がりながらも不思議そうに答えた。アイザックは考え事をしていた。
「アーロン、君がジークを殴ったとき、ジークはまだ生きていた。君はジークを殺していなかった」
「当たり前だ。お前は今目の前で生きているじゃないか」
「違う、私はジークではない。さっき嘘をついた。そうすればジークの真相がわかるかもと思ったのだ」
アイザックは床のシミをみていた。
「ジークはその後何者かによってここで殺されたに違いない。床に血が流れた後が残っている」
それを聞いたジェニファーもアーロンも驚いた。その時また誰か入ってきた。それはあの老人だった。
「皆さんここで何をしていらっしゃるんですか」
「あなたは誰?」
ジェニファーが聞いた。それを聞いてアイザックはおかしいと目を光らせた。
「この方はこのお城に昔から仕える人だ。ジェニファー知らないのか」
アイザックが言った。
「そんな話ジークから聞いた事もないわ。だってジークは一人でここに住んでいた」
その話を聞いてアイザックは感付いた。
「あなたがジークを殺しましたね」
アイザックがそういうと老人はとぼけていた。
「こんな年寄りに何ができるんですか」
アイザックは鞭を老人に向けた。すると老人は敏感な動きでよけた。
「危ないじゃないですか。こんな老いぼれにそんな事をするなんて」
するとさっきまで腰を曲げていたのが急にまっすぐになっていた。
「老人にしては機敏な動きだ。お前は一体誰だ」
アイザックがそういうと老人は観念したのか急に笑い出した。そして頭を引っ張るとかつらが取れそして顔のメーキャップも外した。
「私はこの城の宝物の噂を聞いた悪党ですよ。そうです。ジークは私が殺してしまいました。ここに来たらジークはここで倒れていたんですよ。そこで隠し財産 の鍵となる指輪を奪おうとしたらもう既にジークの指にはなかった。その時にジークは気が付いて起き上がった。そして私に気が付いた。ジークは知っていたん です。私が有名な城荒らしだと言うことを。だからもみ合いになってしまって私は逃げるためにナイフで刺して殺してしまった。だけど宝物を見つけたくてここ で城に使えている老人のフリをしていたと言う訳です。指輪をどうしても探し出したかった。あれがあれば隠れた財宝が手に入るんだ」
それを聞いたジェニファーは悲しみのあまり泣き崩れて床にへたりこんでしまった。その時ジェニファーの胸元からジークの指輪が顔を出した。
「そんなところに指輪が」
城荒らしがその指輪を目掛けて走り出した。アイザックは鞭を一振りして城荒らしを叩いた。城荒しはナイフを取出しアイザック目指して突進してきた。アイ ザックは飛び上がりかわした。そしてまた鞭を振り翳し城荒らしの腕を鞭で絡ませた。
「アーロン、ジェニファーを連れて逃げるんだ」
二人は階段を降り外へと向った。城荒らしはアイザックの鞭に手を掴まれて引っ張っていた。アイザックは鞭を緩め外してやるとその反動でバランスを崩した城 荒らしは床に転けた拍子に何かに頭をぶつけてしまって気絶してしまった。

「ジークは殺されていたなんて」
ジェニファーはショックが隠しきれなかった。アーロンも責任は自分にあると思っていた。アイザックがそこに現れるとジェニファーもアーロンもじっとアイ ザックを見つめていた。
「これで私が人違いだと言うことが分かって貰えましたか」
「しかし本当に良く似ている。だけどジークがこの事件を解決させるために似ているあなたをここへ呼んだみたいね。でもジークの遺体はどこにあるの。殺され たのなら見つけてあげなくてはならないわ」
「その前にあの城荒らしをなんとかしなくては。今気絶して上で寝ている」
アイザックが言った。すると後ろから声がした。
「心配はご無用。この通り自分で起き上がったよ」
城荒らしがまた性懲りもなく現れた。
「さあ、お嬢さんその指輪を渡して貰おうか」
アイザックがまた鞭を一振りした。城荒らしはもうその手にはのるかというように後ろに飛んで交わした。何度とアイザックが鞭を打って城荒らしを井戸の前ま で追い詰めた。城荒らしが井戸の水汲みのレバーにふれたときストッパーが外れた。するとするするとロープが自動的に蒔き戻った。そしてジェニファーが悲鳴 をあげた。なんと井戸から白骨死体がロープに絡まって出てきた。そしてそれは城荒らしを掴むかのように体に覆いかかり城荒らしを井戸へ落してしまった。白 骨死体がまとってる服を見てジェニファーは呟いた。
「ジークだわ」
アイザックはその白骨死体を見つめていた。怖さはなくどこかありがとうと言われているような気になった。そして空では流星群が雨のように降り注いでいた。

何時間後かに警察達が城の周辺を捜査していた。ジークの遺体も収容された。城荒らしは井戸の中から救い出され逮捕されて連れ行かれた。アイザックはジェニ ファーとアーロンと一緒にもう一度ジークの肖像画を見ていた。そして指輪の事を考えていた。
「ジェニファーその指輪を見せてくれないか」
アイザックがその指輪を手にして星のようにちりばめられているダイヤモンドを見ていた。そして暖炉のマントルの沢山の丸い飾りを見たときにアイザックは気 が付いた。
「指輪のダイヤの位置と暖炉のマントルの丸い飾りの位置が一部一致する部分がある」
アイザックは指輪のダイヤの位置にそって暖炉のマントルの丸い飾りを押してみた。するとその丸い部分はボタンのスイッチのようになり下へ沈んでいった。再 び指輪のダイヤの位置にそってダイヤの数だけ押してやると暖炉だと思っていたところの煉瓦の壁がエレベーターのドアが開くように開いた。そこには下へ続く 階段があった。アイザックはその中に入って行くとジェニファーもアーロンも後をついていった。そして階段を降り終わったところは広い空間になっていた。
そしてそこにはメリーゴーランドのような乗り物と沢山の絵本、そしておもちゃが散らばっていた。壁には沢山の写真が飾られていてそこにはジークが子供だっ たときとみられる写真もあった。
「一体ここは」
ジェニファーがそう聞くとアイザックは答えた。
「ここがジークの先祖代々伝わる宝なんだろう。家族が楽しく暮らせ、子供を育てる場所。そう家族の愛こそがこの城の宝物だということだろう。そしてその指 輪をジークが君に渡したということは君とここで家族の愛を育てたかったんだろうと私は推測する」
ジェニファーはジークの事を思って泣きじゃくった。アーロンはジークに申し訳ないと後悔してもしきれなかった。アイザックはそんな二人の様子を見ながら自 分と良く似た男の無念さを感じて同情してしまった。空では流星群が雨のように降っていた。ジークの涙の様にもみえるようだった。

次の日アイザックは花束を持ってジークの城にやってきた。自分に似た男がここで暮らしていた様子を想像しようとした。ジークとは会ったこともないのにどこ か彼を感じる部分があった。きっと自分と同じように孤独な部分を持ち、人付き合いが悪いのではなくて自分をどのように表現してよいのか分からなかっただけ だったのだろうと思った。
「顔も似ているがどこか中身も似ている男だったのかもしれない。是非会ってみたかった」
アイザックはそう呟いた。

「アイザック」
声の方向を振り向くとそこにジェニファーが居た。
「ジェニファー」
「アイザック、本当にありがとう。あなたがここへ来てくれたお陰でこの一年間の思いが吹っ切れたわ。私これからアーロンを大切にしようと思う。私も過去の 事ばかりにこだわらずに次へ進む事にしたわ。ジークもきっと私に幸せになって欲しいと思っているわ。だからジークのためにも幸せにならなくっちゃ」
ジェニファーの言葉を聞いてアイザックは微笑んだ。その笑顔はジェニファーにとってジークが微笑んでいるように思えた。
「さようならアイザック。元気でね」
そういうとジェニファーは去っていった。

休暇を追えてアイザック、メイ、シンはJ9基地へ再び戻ってきた。
「休暇はどうだったの、アイザック」
お町が聞いた。
「ああ、中々だったよ。そっちはどうだった」
するとお町も、キッドもボウィもどこか苦笑いをしていた。
「どうした何かあったのか」
「いや、なんでもないぜ、なぁボウィさん」
「そうそう、そういうこと、ねぇキッドさん」
どこか怪しげな言い方だったのでアイザックはギロっと睨んだ。
「やだアイザック、何を勘繰ってるの。あっそうだやることあったんだ」
と行ってどこかへ行った。
「俺も俺も!」
「そうそう俺ちゃんも」
キッドもボウィも去っていった。アイザックは自分の留守中に何かあったと思ったがそれはそれでどうでもよかった。また自分も皆に休暇中にあった出来事を話 すつもりもなかった。

「あのね、ここだけの話だけど、アイザックさんたら休暇中に女性とね」
とメイが皆に話していた。
「そうそう、きれいなお姉さんとデートしてたんだよ」
シンがそういった。
「嘘!」
お町もキッドもボウィも驚きを隠せなかった。
「あら〜アイザックがデートなんて」
お町が言った。
「嘘だろ、あのアイザックが」
キッドも信じられなかった
「ひえ〜信じらんない」
ボウィも驚きを隠せなかった。
三人は窓辺に立って外を見ているアイザックを信じられない様子で見ていた。アイザックは宇宙を見ながらジークの事を考えていた。
「家族の愛か」
そう呟くとメイとシン、そしてJ9のメンバーに囲まれている自分は幸せだと思うのだった。


思いを馳せることもなく命は銀河に消えていく
そんな自分にそっくりな男の気持ちが伝わって
会った事もないのに教えられた大切なもの
それを胸に刻んで星のようにいつまでも輝やかせてみようじゃないか
アイザックもまた人の子なり

おわり

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