15創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『未来へ繋がる今だから』

談話室でお町がコインのようなものが付いたペンダントをボウィの顔の前で小刻みに振っている。されるがままに動くことなく相手になるボウィ。

「いい、ボウィ、あなたは猫よ猫なのよ」
お町が真剣な眼差しでボウィに言い聞かせている。

ボウィが突然「ミャー」と発するとお町の胸めがけて手を伸ばした。

「パチッ!」と跳ね除けるお町。

「ちょっと痛いじゃない、猫なんだからじゃれてるだけじゃん」
ボウィが叩かれた手をさすりながら不満そうな顔でお町を睨む。

テーブルに足を乗せて銃を磨きながら呆れるキッド。
「あんたらさ、催眠術なんて素人が意図も簡単にできると思ってる訳?」

「あーらキッドちゃん、お言葉ですけど、これでもお町さんはね、なんでも器用にできる体質なのよん。やってみないとわからないじゃない」
お町は手元にあった雑誌を見ながらどうすればできるのか思案していた。

「しかし、相手がボウィじゃ、いいようにフリされるだけだぜ」
キッドが馬鹿馬鹿しいとでも言いたげに答えた。

「俺ちゃん、ちゃんと催眠術にかかったんだけどな、猫になった気分でお町の胸に飛び込みたくなったんだけどな」
ボウィがおどけて言った。

「催眠術にかからなくてもだろ?」
キッドがさらりという。その通りとでもいうようにボウィが白い歯を見せてニタっとしていた。

「ところでアイザックはどこへいったの?」
お町が聞いた。

「アイザックならヤボ用でビカビカストリートに行ったぜ。俺ちゃんもお供しようとしたら一人で充分だとさ。全く相変わらず愛想ないぜ」
ボウィが言った。

「アイザックってほんと何考えているでしょうね。こういう男こそ催眠術かけていろんなこと聞き出してみたいわ。うーん興味がそそられる」

「バーカ、お町、アイザックのような男が催眠術にかかるわけないじゃん。ボウィのような馬鹿にもかかんなかったのに」

「あー、俺ちゃんのこと馬鹿呼ばわりしたな、キッド。そういうお前は催眠術にかかんないとでもいうのかよ。お町、試しにキッドをかけてみろ」

ボウィが突然キッドの背後に回りキッドを羽交い絞めにした。お町がペンダントを振って催眠術をかける。

「馬鹿、何すんだよ。やめろよ」
「キッドちゃん、さあここはリラックスして。キッドちゃんはそうね、女の子よ。とってもかわいい女の子・・・」

沈黙がよぎった。キッドが動かなくなったのでもしかしてとボウィはキッドの体から離れた。その瞬間キッドが銃をボウィの米神にあてた。

「馬鹿やろう、みんなして何考えてんだ」
キッドが怒ると、お町もボウィもやっぱりだめかと何事もなかったようにそれぞれ自分のしたいことをするのだった。


一方、アイザックはビカビカストリートで用事を済ませJ9基地へと戻ろうとしていた。そのとき足元に何かが触れ、視線を下にするとそこには一匹の黒い猫が スリスリとアイザックの足に擦り寄っていた。

「ルビ!」

突然声が聞こえるとその黒猫は声のした方向目指して走って行った。その先にはロングの黒髪の女性が立っていた。

「あなた、猫はお好き?」
アイザックに向かって話しかける。

アイザックは暫くじっとみていた。

「あなた変わった人ね。この猫もね、あまり滅多に人には懐かないの。どこか心に闇のある人が好きみたい。あなたの目をみていると心の闇が見えるわ。ねえ、 もしよかったら私に付き合わない?安くしておくわ」

まるで売春婦のような誘い方にアイザックは目を鋭くしていたが、女性の指差す方向をみたとき少し笑みを浮かべた。そこには怪しげにサイキックというおんぼ ろな看板が掲げられていた。この女性は占い師だということがわかった。

猫も女性の商売を助けるかのようにアイザックをじーっとみていた。ニャーと声を発する猫に『おいで』といわれているようで、アイザックは女性の指差す場所 へと向かった。

ドアを開け部屋を見渡すとそこは怪しげな空間が広がっていた。薄暗く何か目に見えないものが物陰に隠れていそうな雰囲気である。棚には古びた人形、壁には 抽象的な絵画が無造作に飾られている。 けして広くはない空間だが、その女性にはとても居心地がよい様子である。部屋のほぼ真ん中辺りに机が置かれてその上には大きな水晶球が乗っていた。その水 晶の前に座れと手を差し出され椅子に座るアイザック。黒猫もアイザックの膝元に飛び乗り喉をゴロゴロならしていた。

「さて、あなたは過去に悔しい思いをしているわね。そしてそれが今のあなたを作り出している。とてつもないことをこれからやろうとしてるわ。これから先何 百年経っても影響するようなこと」

あまりにも漠然とした占いだが、面白半分にアイザックは聞いていた。アイザックは女性を観察していた。長い黒髪、白い肌、そして胸のペンダント。クリアー な赤い石が揺れるたびにキラキラと光を発していた。

「あなたさっきから一言も話さないけど、普段も人から怖がられそうなタイプでしょ。でも私にはわかる。とっても優しい人だということが。そうじゃなかった ら二人も血の繋がってない子供養ってないもの。年取ってるように見えてほんとはまだ若いわ。それなのにもう二人の子持ちなのね」

これにはアイザックもびっくりした。

「子持ち?」
アイザックが呟いた。

「私には見えるの。小さな二つの愛があなたを包んでいるのが。それはあなたの血を引いてないの、だから血の繋がってない子供ってこと。違う?」

アイザックの頭にはメイとシンが浮かんでいた。

「それからあなたには仲間がいる。とても気の合う仲間。あなたのことを信頼してるけど、あなたはいつもそっけないわね。たまには羽目をはずして相手してあ げたらいいのに」

今度はキッド、ボウィ、お町が頭に浮かんだ。

「君は腕のいい占い師のようだね。気に入った」

アイザックはこれ以上自分のことを探られるのがいやなのか、立ち上がろうとした。膝の上で丸まっていた猫が慌てて降りる。アイザックはコインを数枚机に投 げるとマントを翻しその場を去ろうとした。

「待って、これをもっていって」

女性がアイザックに手渡した。それは一枚のディスクだった。

「それを聞けばあなたの心の闇に光を差し込んでくれるわよ」

アイザックはそれを受け取るとその場を去って行くのだった。


J9基地にアイザックが戻ったとき、ちょうどポンチョから依頼の通信が入っていた。

「ああ、アイザックさん。ちょうどよかったでゲス。依頼の話でゲス」
ポンチョが金になりそうとでもいいたげにニヤニヤと話し出す。

「今回の依頼はなんでもあるカルト宗教に入ってしまって戻らなくなった人々を助けて欲しいんだそうです。そのカルト宗教っていうのがヒーマ教とかいってこ れがその教祖の写真です」

髭の生えた中年男の写真がモニター一杯に映る。

「あっ、この人、催眠治療で有名な人じゃない。今雑誌でみてたとこよ。これにも紹介されてるけど、この人がカルト宗教の教祖なの」
お町がびっくりした。

「なんだよ、それじゃお町が興味をもった催眠術ってこのカルト宗教だったのか?げっ、それじゃお町もカルト宗教に入って戻ってこなくなってたかも?」
ボウィが茶化した。

「そうなんでゲス。殆どの信者はその教祖の力によって洗脳されて戻ってこなくなってしまったでゲス」
ポンチョが是非とも依頼を請けて欲しそうに哀れそうに言った。

アイザックは写真をみて目を鋭くしていた。その教祖の写真の首元には先ほど出合った占い師と同じ赤い石が光っていた。

「ヒーマ教・・・赤か・・・」
アイザックが呟いた。

「アイザック、赤がどうしたんだい」
キッドが不思議そうに聞いた。

「ヒーマはラテン語で赤を意味する。そしてその胸元の赤い石はヒーマタイト、何か関連がありそうだ。ポンチョ、そのヒーマ教はどんなカルト宗教なんだ」

「いえ、別にこれといって目立った活動はしてないんでゲスが、この教祖がなんでも信者を操って奴隷のように扱っているとか言うらしいでゲス。催眠術をかけ られたように自分の意思では動けないためにそこから抜け出せないらしいんでゲス」

「ちぇっ、それじゃゾンビにされてるのと同じじゃないか。なんて自分勝手な教祖だ。俺ちゃんそういうの腹立つ」
ボウィが言った。

「ほんとやだわ。私そんなのに興味をもってしまったなんて。馬鹿みたい」
お町も嫌悪感を露わにした。

「どうするアイザック」
キッドが判断を迫った。

「おっと、依頼金でゲスが、1000万ボールでゲス」
ポンチョが忘れてたとばかりに慌てて付け加えた。

久々の大仕事にボウィはヒューと口笛を吹き、お町は悪くないわねと目を大きくした。キッドもまた金額の大きさが魅力だったがアイザックの表情が懐疑心を抱 いているように見え何かいい仕事じゃないように思えた。

「今回の依頼は複数の信者の家族が集まって申し出てきたでゲス。そのために依頼金がかなり膨らんだでゲス。家族にとってはその教祖が憎らしく、場合によっ ては葬ってほしいとまで言ってるでゲス。このまま放っておけばまた新たな信者が増えるだけでゲスし・・・」

「アイザック、受けようぜ。困った人を救い悪の根源を立つ。まさにJ9に相応しい仕事だと思うぜ」
ボウィは金額だけでもう受ける気になっていた。

「葬るは別としてその信者を救うのは受けよう」
アイザックが答えた。

ポンチョは依頼が成立したことが嬉しくてもう自分の取り分のことを頭で考えながら通信を切った。

「諸君、聞いたとおりだ。ヒーマ教に入った信者救出だ」
アイザックが念を押すといつものように「イエーイ」が返って来た。

お町とボウィはヒーマ教の周辺を探るべき情報を収集に出かけた。キッドはアイザックについて行った。

「よお、アイザック、どこかこの仕事に疑問でもあるのか?」
「ああ、少し気になる事がある」
キッドがその続きを聞きたそうにしたが、それ以上アイザックは答えなかった。キッドはいつものことだと思いアイザックが自分から話し出すまで何も聞かな かった。

アイザックはあの占い師に会いにと再びビカビカストリートへとやってきた。そしてあの怪しげな部屋へと入ろうとドアを開けた。しかしそこは先ほどみた部屋 と著しく違う光景が広がっていた。何者かが荒らし、中はめちゃくちゃにされていた。

アイザックは突然部屋の隅に向かったかと思うと呆然と立ちすくんだ。キッドが側へ行くとそこには腹から血を流して横たわっている黒猫がいた。もう動くこと はなかった。

キッドは訳がわからずただその光景を眺めていた。もう我慢の限界だった。
「アイザック、一体どういうことだ。説明してくれよ」

「私にもわからん。ただここにはあのヒーマ教祖と同じペンダントをした女性がいたんだ。もしや何か知ってるかと思ってやってきたらこの様だった」
アイザックはあらん限りの能力を使ってこの状況を整理しようとしていた。

「それじゃ、その女性はヒーマ教の回しもんってことで、ここで信者を集めていてそれが許せない奴らに命を狙われたってことか」
キッドがそうに違いないとでもいうように確信を持って言った。

アイザックはただ黙っていた。そして横たわった黒猫を哀れみながらその場を去っ た。

J9基地に戻るとすでにお町とボウィが戻っていた。二人はヒーマ教のアジトを突き止め、周りには武装された人間がいることを報告した。

「やっぱりあの宗教はおかしいわ。どうして入り口に武装した奴らがいるのかしら」
お町が見てきたとおりの事を話した。

「そっちは何かつかんだかい」
ボウィが聞いた。

「何も詳しいことはわからないが、教祖と同じペンダントを持つ占い師が何者かに襲われて行方不明になっていた」
アイザックはことの一連を話し出した。

「へぇ、その占い師、何でも人のことがわかるの?」
お町は興味を持った。

「今そういうことを言ってる場合じゃないだろ。しかしこの女性が何か教団のことを知っているかもしれないだけに突然襲われていなくなったのはちょっと気に なるぜ」
キッドが言った。

「とにかく一刻も早くこのカルト集団潰して信者を救出しようぜ。ブライガーがあれば一発だぜ」
ボウィは腕がなるとでも言わんばかりに指をぽきぽき鳴らした。

一同はブライサンダーに乗り込み、ブライスターへ変形してカルト宗教のアジトへと向かった。アステロイドにある隕石街と同じようにドームに包まれた小さな 隕石の上に宮殿のようなものが建っていた。その付近にはお町の言った通り武装された人間が砦を守るように見 張っていた。そこへ堂々と現れるブライスターで突っ込むと同時にコスモワインダーが一機、宮殿らしき建物へと向かった。キッドとお町が乗っていた。

「キッドちゃん、教祖に会っても目をみちゃだめよ。催眠術にかかってそれこそかわいい女の子になっちゃうわよ」
「おいおい、お町こそ気をつけろよ。それこそ猫にされて引っ掻きまわすんじゃねぇのか」

二人は余裕とでもいうように教祖を探しに突っ込んだ。しかし表の武装した状況とは裏腹に中はとても穏やかで平和そのものだった。キッドとボウィはコズモワ インダーを降り、辺りを見回した。そこには不思議そうに見る信者らしき人達がいた。

「あなた達も逃げてきたのですか?」

その中の一人が声を掛けた。キッドとお町はお互いを見つめながら困惑していた。

「ちょっと逃げてきたって誰から?」
お町が聞いた。

「もちろん、あのカルト宗教からですよ」

「ちょっと待ってくれ、カルト宗教ってここのヒーマ教のことだろ」
キッドは訳がわからなくなった。

「ここは勝手にヒーマ教と呼ばれてますが、カルト宗教ではありません。皆ここで避難しているだけなのです。ジル様が私達を救ってくれてま す」

「ジル?」
キッドとお町は声を合わせてその名前を繰り返した。

そこへ髭を生やした男がキッドとお町の前に現れた。

「あっ、この人あの催眠術の教祖よ」
お町が雑誌で見たとおりの顔を目の前にして驚く。

「君達は何者かね、手荒な真似をして侵入してきたみたいだが」
ジルが穏やかに聞いた。

そしてアイザックとボウィも現れた。ボウィは銃を向けていたが、キッドが抑えて状況が違うことを気付かせた。アイザックは目の前の男をじっと見つめてい た。

4人は部屋に通され事の始終を説明した。そしてジルは困ったような顔をした。

「皆さん何か誤解をされているようですが、ここは決して無理に入会させるような場所ではありません。その証拠にここにいる人間は自由に自分の行きたいとこ ろへいけます。最初は悩みを持つものがここで助けを求めるものでしたが、いつの頃からかカルト宗教に入ってしまい酷い仕打ちをされながらも抜け出せないも の が助けをもとめるようになり、しつこく追い回されるものがここで避難をしているだけです。彼らから守るために仕方なく入り口に武装したものを配置させてる んです」

話を聞いて今回の依頼と話が食い違うことにアイザックは事の裏があることに気がついた。

「そのカルト宗教というのはどういうものですか」
アイザックが聞いた。

「とても秘密主義の隠れた組織です。一般には知れ渡ってないもので、信者達も上手く洗脳され抜け出せない状況にさせられます。お布施を集めるために全財産 を渡すように教育され、その後も組織のために働くことになり、酷いときには修行の一環だとして暴行も加えられることもあります。私はただそのようなものか ら救いの手を差し伸べるために洗脳をとく催眠治療をしているだけなのですが、それがその信者の間で広まり、救いを求めるものがここへ集まってくるというわ けです。信者が減り続けるのが私のせ いだとでもいわんばかりにカルト宗教は私を攻撃しては、いらぬ噂を流し、あたかも私がそのカルト宗教の教祖というデマを流しています」

「俺たちはそのデマにまんまと引っかかってしまったって言うわけか」
キッドが呟いた。

「あーあー、やっぱり金に目がくらんじゃうと人間ダメだね。何が真実かつい見失っちゃうね」
ボウィが言うとお町がボウィの頭をこついた。
「あんたが一番くらんだんでしょうが」

「ところで、お伺いしたいのですが、その胸のペンダントのヒーマタイトの石ですが、それは何か意味があるのでしょうか」
アイザックは同じ石を持つあの占い師のことを考えていた。

「よくこの石のことをご存知ですね。これは私が昔手に入れたものでして、体の中に赤い血が流れているように石にもその血が流れているように見えましてね、 そしてそれが生命の源の象徴として強く生きていく証として作ったものなんです。早くに妻を亡くしてしまいましてね、娘に母親の分までしっかりと生きて欲し いと思いまして娘もこれと同じものをもってるんですよ」

その話を聞くなりアイザックの顔は強張った。あの占い師はこの男の娘だということがすぐにわかった。そしてあの荒らされた部屋を思い出し、アイザックは懸 念する。

そこへ、男が一人駆け込んできた。
「ジル様、大変です。こ、こんなものがあのカルト宗教から届きました」

それは脅迫状と一枚の写真だった。その写真はアイザックも見覚えがある女性が縄に縛られて写っていた。ジルは脅迫状と写真を見るなりうなだれた。そこには 娘を返して欲 しければ今行ってることを全て放棄しろとのことが書かれていた。

筋書き通りの展開にアイザックは手を強く握り締めた。

「ここは私達にお任せ下さい。娘さんは私達が救い出します。いくぞみんな」
アイザックの一言に一同後をついていく。

元信者からカルト宗教の本部を教えてもらいそこへ向かうJ9一同。

ブライスターを荒々しく運転しながらボウィが言う。
「今回俺ちゃんたちすっかり騙されちゃったって訳ね」

「ああ、あの依頼っていうのも、カルト宗教が勝手に裏で操作してたんだろう」
キッドが答えた。

「道理で都合よく依頼金が高すぎたわけだ」
お町も反省しながら呟いた。

「さあみんな、真の悪のカルト宗教を始末だ」
アイザックが鋭く言う。
「イエーイ」


カルト宗教のアジトは隕石街の中でもビジネス街としてしられるアステロイド中心部のビルの一角にあった。

部屋の隅に占い師の女性が縄で縛られ、側には悪の根源の教祖と数人の幹部が取り巻いていた。

「お前の父親のせいで、私の計画が台無しだ。この始末とってもらう」

「いや、その始末を取るのはお前だ」
キッドが叫び、銃をぶっ放しながら突然天井から飛び降りてきた。続いてボウィ、お町が飛び降り側にいた幹部の男達に蹴りを入れる。

「お前達は・・・」

「我々はコズモレンジャーJ9。己の欲望のままに無垢な人々を操り、苦しめてまでも利益をすするお前達を許す訳にはいかぬ」
アイザックが電磁鞭を振る。

「まっ、待ってくれ。命だけはとらないでくれ」

「命までは貰おうとは思わぬ。しかしこの始末きっちりとつけてもらう」

お町が縛られていた女性の縄を解いてやった。女性はアイザックを見つめて静かに微笑んだ。
「ありがとう」

「ルビは残念だった」
アイザックは黒猫の死を悲しんだ。

女性はわかったとでも言うようにただ頷くだけだった。

女性を父親の元に連れて行き、そこでJ9の使命は終わった。お礼を言われる中去っていく一同。 その後、カルト宗教の悪事も世間に広まり、催眠治療を宗教団体と誤解していたジルの疑いも解けることになった。


「ああ、今回は骨折り損のくたびれ儲けってとこか」
ボウィが嘆いた。

「仕方ねぇだろ、あの依頼金も裏で悪徳カルト集団が回して、あたかも信者の家族からと嘘をついての依頼だった。元はといえば騙された信者のお金だ。受け取 る訳にはいかねぇ」
キッドも正当性を訴えながらも内心は痛かった。

「ポンチョのあの悔しがりようったらなかったわ。元はといえばしっかりと情報を確かめないポンチョが悪いんだから、んもう!」
ポンチョだけが責められるわけでもないとお町は思いながらもとりあえずはポンチョのせいにしておいた。

「だけどさ、あのヒーマタイトのペンダントって、催眠術とか占いに力を発揮するのかな。あの親子も不思議な能力もってたし。そうだったらあの石ほしくなっ ちゃうね。そしたら俺ちゃんも女の子にモテモテになれるかな」
ボウィが言った。

「そんなんに頼んないとダメなほどボウィは末期症状なのか。俺なんてそんなもんいらないぜ。なんせ俺自身が最高の魅力発揮できるからな」
キッドがボウィを見下して言った。

「うっせい、ナルシスト野郎」
ボウィが怒った。
「ああ、言ったな」
キッドも腹が立った。

ただでさえ、依頼金が入らずむしゃくしゃしているところだったために取っ組み合いになった。

「あーあー、どうして男ってこういつまでもガキなんでしょう。やっぱり男は大人に限るわ。どこかにいい年上の男いないかしら」
お町がそう呟きながら雑誌の占いをみていると、そこには『気になる男性現れし、ただよく判断して行動すべし、涙を伴うこともあり』とあった。

キッドとボウィが側で取っ組み合いをしてるのもお構い様に、お町はその占いを真剣な眼差しで読んでいるのだった。

その頃アイザックは占い師の女性から貰ったディスクを思い出しヘッドホンを耳にあて一人静かに部屋で聞いていた。

「心の闇に光を照らすか・・・なるほどそれには笑いってことか」

アイザックはそう呟きながら笑っていた。それは20世紀に活躍したコメディアンの漫談が入っていた。

メイとシンが偶然アイザックの笑っている姿をみて不思議そうに側に寄って行った。
「アイザックさん、何を聞いてるの」
メイが興味津々聞く。

「アイザックさんが一人笑ってる姿なんておいら初めてみたよ」
とシン。

「いや、なんでもない」
二人の前でアイザックは少し照れた。しかし二人の笑顔を見てそれもまた心が軽くなる思いがした。そしてさらに『子持ち』という言葉を思い出すと、また笑わ ずにはいられなくなった。

「やだ、アイザックさんが壊れちゃった。どうしようシン」
「姉ちゃん、お町がきっと催眠術かけて変にしちゃったんだよ」

「メイ、シン、大丈夫だ。心にちょっと光が差しただけさ。お前達が側にいたからその光がさらに強くなったのさ」

アイザックが何を言いたいのかわからず二人はただきょとんとしていた。

「ところで来週はカルナバルが催される。美味しいものでも食べて皆で派手に騒ぎまくろうではないか。な、メイ、シン」

「うわ、素敵」
「いやっほー。大賛成」

二人は嬉しさのあまり談話室の三人に報告しに行った。

占い師の言ったことを鵜呑みにするわけではないが、アイザックは少し参考にしようかと思った。酒は飲める訳ではないが、カルナバルではきっと薦められるだ ろうから、その準備も今から整えておかないとと酔い止めの薬の準備をするのだった。


過去のことは過ぎ去りし、どうにもこうにもなる分けない。未来 の予言は当たるとも限らぬ。ならば今のこのときを自ら作り進むだけ。それがどのような結果になるかわからぬが後悔ならぬことにとアイザックは挑む。銀河旋 風ブライガーお呼びとあらば即参上。

おわり


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