14創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

ご注意
このお話は読んで不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
特にキッドのファンの方にはお勧めできないコンテンツが含まれます。
キッドの濡れ場が少し入ってます。
どうかそれをお覚悟でお読み下さいませ。
キッドのイメージが壊れると思われる方はどうぞお読みにならないで下さい。
もし不快に思われても一切責任は取れませんのでご了承お願いします。
(本人書いていて葛藤したくらいですから)


 『宇宙の果ての想い』

「ロニー最高だったぜ」
「丈太郎。何もかもお前のお陰さ。言葉で言い尽くせない程感謝しているよ」

宇宙の難民救済チャリティーコンサートを無事に終えレイダースの打ち上げパーティに顔を出すキッド。関係者達も多数きている。集まった大人数にキッドはロ ニーの人気振りを再確認した。ボウィ達も誘ってみたが、友達同士で募る話もあるだろうと皆は遠慮して先に帰ってしまった。

ロニーの妹を無事救出してオメガコネクションの脅迫から逃れ何もかも無事に終わりロニーもキッドも気分がいい。酒を片手に親友同士の語らいを久しぶりに楽 しんでいる。

「丈太郎さん、私を助けて下さって本当にありがとうございました」

ロニーの妹シェリーからもお礼を言われてそんなの当たり前さと得意げな表情をするキッドの顔はいつものように自信溢れた笑顔だった。シェリーも酷い目にあ いながらも済んだことだと今自分が無事なことにほっとしている。すぐに嫌な事を忘れるためにも楽しいパーティに参加していた。

「丈太郎、ちょっと悪い、インタビューが入った。すぐに戻ってくるから待っててくれ」
そういってカメラマンの前に立つロニー、今日の慈善コンサートの取材を笑顔で受けていた。

取材を受けるロニーの顔を見つめるキッドにシェリーは聞いた。

「丈太郎さんはなぜバンドをやめたの」

キッドは過去のことはもう忘れたとばかりに笑って言葉を濁した。キッドにはあの頃目標がありいろいろと自分を試したいことで一杯だった。バンドでの音楽演 奏もそのうちの一つだったが、それだけでは満足しきれずに軍隊に入って自分を試すことを考えていた。今ではそれも話せるほどのことではないのもわかってい た。無断脱退で命を追われる始末で何もかも人生が狂っているように思える過去を人にどうだったととやかく聞かれるのは正直逃げたかった。

「あっ、モニカだわ」
シェリーが取材のカメラマン達の中から知っている顔をみつけると嬉しそうに手を振って合図をしていた。それに気がつくと彼女はシェリーの下へとやってき た。

「シェリー、元気だった」
「もちろんよ。でもちょっと嫌なこともあったけど、今は最高に気分はいいわ」
二人が楽しそうに会話している様子を見ながら手に持っていた飲み物を一口すするキッド。
「あ、ごめんなさい丈太郎さん。紹介するわ。こちら私の大親友のモニカ。報道カメラマンよ。といってもまだ卵なんだけどね。元アマチュア時代のレイダース のおっかけもやっていたのよ」
シェリーが紹介するとモニカはニコッと笑いキッドをみつめた。
「キッドね、覚えているわ。また会えるなんて思わなかった。といってもあなたは私のこと覚えてないでしょうけどね」
キッドは面食らった。大概のかわいい女の子なら印象に残っていたがモニカについては何も思い出せないでいた。モニカのライトブラウンの髪は長くさらりと美 しく輝いている。時々髪に手をやってなびかしている姿はセクシーさを感じる。明るくはきはきとした態度もキッドには好感を抱かせた。にこっと笑う笑顔はふ とどこかで見たことがあるような気分にもなった。
「あんた、俺のこと知ってるみたいだけど・・・」
キッドがそういいかけたところへロニーが戻ってきた。
「モニカ、やっぱり来ていたのか。どうだい特別に君にだけ俺の写真を取らせてやるよ」
「あら、ロニーありがたいわ。それじゃキッドと一緒に撮らせて。昔のアマチュア時代のようね」
ロニーはキッドの隣に並んだ。キッドは訳がわからずにただきょとんとした戸惑った顔で写真を撮られた。
モニカは時計を見てどこか時間を気にしている。
「私そろそろいかなくっちゃ。次の仕事があるの」
「えー、もういっちゃうの。今日はゆっくりしていけばいいのに。話したいこと一杯あったのに」
「シェリー、また今度ゆっくりね。それからロニー、今日のコンサート最高だったわ。でもキッドと一緒に演奏しているところまたみたかったな。それじゃまた ね」
キッドを一目ちらっとみてウインクして慌しくモニカは去っていった。キッドは少しドキリとしたのか彼女が見えなくなるまで目で後を追っていた。

「ロニー、彼女誰だよ。なんで俺のこと知ってるんだ」
「丈太郎覚えてないのか。俺達がバンドを組んでた頃に熱心に色々と世話をしてくれた子だよ」
「あんな美人いたか?」
「ああ、彼女きれいになったよな。俺も最初誰かわからなかったけど、シェリーの親友と聞いて思い出したんだ。あの頃は今と違ってぽっちゃりしてたし、垢抜 けしてなかったけどな。お前も昔の写真見たら思い出すよ」

ロニーもまたモニカを目で追っていた。どこか気になる様子で無意識で顔が自然と綻んでいるようだった。
「やだ、お兄さんも、丈太郎さんも彼女に惚れたんじゃないでしょうね。でも無理よ。彼女にはとても好きな人がいるみたいで他の男には見向きもしないんだか ら。まあ彼女にしてみれば自分はモテナイって思いこんでるところがあるの。あんなにきれいになったのに本人それに気がついてないのよ」

「馬鹿、俺はともかく、助けてもらった相手に失礼なことをいうんじゃないぞ、シェリー」
ロニーは妹を叱った。悪いことをいったかしらと舌を出してシェリーはおどけてそして逃げていった。

「丈太郎、すまない。シェリーは思ったことなんでも口に出すから気にしないでくれ」
「ああ、気にしてないさ。元気になってよかったよ。それよりモニカって中々のいい女じゃないか」
「やっぱり丈太郎もそう思うか。実は俺、一度デートに誘ってみたんだけどさ、断られたよ。昔は全然相手してくれなかったのにって。それでもシェリーの友達 だから家族ぐるみでつきあってるみたいなもんなんだけど」
「その昔だけど、俺はすっかり思い出せないぜ」
「思い出さなくてもいいさ。俺もあの時ちゃんと気がついていたらって後悔しているくらいさ」
「お前、彼女に本気なのか?」
「さあ、どうだか。でも俺今まで女性に振られたことないだろ。だから気になるのかもしれない。そういうお前はどうなんだよ。彼女いるのか?」
「俺か、お前も良く知ってるだろ。俺は女に興味ないってこと。俺はギターとガンマニア馬鹿さ」
「ああ、そうだったな」

久しぶりに腹を割った男同士の会話をする二人。昔の思い出話や今の状況についてあれやこれやと話こんでいた。

先に皆ブライスターで帰っためにキッドはタクシーでも拾ってJ9基地まで戻らなければならなかった。しかし時間が時間だった。アステロイド行きの車なんて この時間中々拾えなかった。仕方なく繁華街をブラブラしてはどこか落ち着ける場所はないか探していた。

ぎらぎらと光るネオン街にはどこか如何わしい雰囲気のする店がわんさかと目に付く。アステロイドのビカビカ通りに比べたらまだ治安はいい方だったが、寝な い町はどこも悪ぶれた奴がごろごろとしているもんである。

そんな時一人の女性が慌てて店から飛び出して逃げるように走っていった。その後をいかつい男二人がすごい剣幕で追いかけていた。

「このアマ、待て」
「待てる訳ないでしょ」

それはモニカだった。キッドは無意識に後を追いかけた。

路地に入り込み行き止まりで行き場を閉ざされたモニカ、危機感を感じながらも追い詰められた猫が反撃しそうな態度で力強く睨んでいた。

「さあ、そのカメラを渡してもらおうか」
「嫌よ」
「だったらただではすまないぜ、威勢のいいお嬢さんよ」

一人の男が飛び掛ったとき、モニカは足蹴りで男の腹に蹴りをいれた。
「この野郎、生意気なことを」
男の怒りは燃え上がりモニカの腕をつかんでねじり上げた。モニカの顔は痛みで苦しそうだったがそれでも負けてなるかと必死で歯を食いしばっていた。

「おいおい、おっさん方よ、男二人に女一人は卑怯じゃないのか。その手を放してやりな」
キッドを目の前にモニカは驚いた。男達も突然声をかけられ注意が分散した。その隙にモニカは握られていた手を振り切りキッドの下へと走る。

「キッド、どうしてここに」
「さあ、君を助けるために始めからしくまれていた偶然の運命ってとこじゃないか」

キッドはかっこつけるように笑顔で答えていた。

「何をつべこべいっている。そいつを渡せ。さもなくばお前も痛い目をみるぞ」
「痛い目ってどんな目ですかね。とくと拝見させて頂きましょう」

キッドがおどけると男二人はさらに頭に血が上りキッドめがけてかかっていく。男二人よりも小さく華奢なキッドは機敏な動きで男の腹にパンチをお見舞いし、 蹴りを入れテキパキと攻撃していた。

「おっさん達よ、諦めたら」
「この野郎、なめるんじゃねぇ」
懐からナイフを出しキッドを威嚇した。

「そんなもん出したって無駄だと思うけど」
そしてキッドは自分の銃を構えてナイフめがけて撃ってやった。男はナイフを落とし驚いた顔をして逃げていった。もう一人の男も後を続いて去っていった。

「やれやれ」
キッドがこうなることがわかってながら無駄な抵抗をした奴らを呆れては哀れんでやった。

「キッド、ありがとう」
モニカの目は信じられないとでもいうようにキッドの顔を見つめていた。

「一体何をしでかしたんだ」
「ちょっとスクープを撮ろうとヤバイ店に忍び込んだって訳」
「なんだ、報道カメラマンなのにパパラッチみたいなことをしているのか」
「そう思われても仕方ないわね。だけど有名になるには多少の話題になる写真も撮らないといけない」
「ふーん、色々と大変なこともあんだな」
「それよりキッド、またあなたに会えて嬉しいわ」
「それなんだけどさ、俺どうしてもお前の事思い出せないんだ」
「あら、昔のこと思い出したい?だったらうちにいらっしゃい。昔の懐かしい写真見せてあげる」

モニカにそういわれ、別に行くあてもなかったキッドには少しの暇つぶしにでもなるかと素直について行った。モニカの家はウィークリーホテルとでもいうの か、長期滞在のために一時借りれるような住まいだった。仕事で宇宙中をかけまわっているために定住先が落ち着いていない。

キッドが部屋の中に入りあたりを見回すと家具やソファー、テレビ、テーブルといったものは備わっていた。カウンター式の小さなキッチンも常備されていて自 炊もできる場所であった。

「仮住まいだけど、中々快適なところなの。でもいつかは落ち着いて定住するところが欲しいわ」

そういいながらお茶の用意でもしようと台所に立つモニカ。キッドは居間のソファに腰をかけた。目の前のコーヒーテーブルにはアルバムらしきものが無造作に おいてあった。それに手をかけ中をぱらぱらと見るキッド、一瞬はっとした。知ってる顔が勢ぞろいしている。そして若き頃の自分の姿もそこにあった。

「あ、見つけた?それが昔の写真。殆ど私が撮ったのよ。そのアルバムだけはいつも側に置いてるの。私がカメラマンになろうとしたきっかけにもなったしね」

キッドは暫く懐かしい写真を見つめながら、忘れかけていた過去が突然自分を襲ってきたことに衝撃を受けていた。まだこの頃は自分が将来どうなるのか想像も つかなかった。何にでも挑戦してやろうという意気込みが気持ちを常に高まらせていたことを思い出し、写真の自分をみても輝いて希望に満ちた表情をしている のがショックだった。今の自分は過去を忘れようとただ前をがむしゃらに進んでいる。希望などあの頃の気持ちの微塵すら感じられない。それがどこか虚しさを 心に呼び込ませていた。

黙って暗い面持ちで写真を見るキッドを心配してモニカはキッドの隣に腰掛けた。

「キッド、かなりの修羅場を潜り抜けてきたんでしょ。昔が懐かしいはずなのに思い出すと悲しくなる。今の自分の境遇と比べてるのね」

モニカの言葉はキッドを我に返らせた。触れたくないことに触れられた事でプライドを傷つけられた気分になった。

「うっせいんだよ」
うまく言い返せない自分に苛立ちを感じ少しぶっきらぼうに答えるキッド。モニカはキッドの顔を優しい微笑でみつめた。

「キッド、相変わらず自信過剰な性格が自分を苦しめているのね。あなたには今正直に気持ちを話せる人がいない。いつも自分で解決しようと踏ん張っている わ」
「だからどうだっていうんだよ」

的を得たその言葉はキッドの気持ちを高ぶらせた。モニカは微笑を絶やすことなく冷静にキッドの苛立ちを受け止めていた。

「だから・・・私はあなたに安らぎを与えたいっていったら?」
「安らぎ?なんだよそれ。俺のことはほっといてくれないか。それに俺こんなこと言われに来たんじゃないぜ」

そっぽを向くキッド。モニカは優しく手でキッドの頬に触れ自分の方に向けたかと思うと突然にキスをした。

「あっ」
驚いた顔でキッドはとっさに離れたが暫く動けなかった。

「キッド、怒りをぶつけてくれても構わない。あなたを受け止めたい。そのままのあなたを」

二人は暫く見つめていた。モニカはゆっくり顔をキッドに再び近づける。今度はキッドも嫌がることなくモニカが近づくまま動きもしなかった。そしてゆっくり と二人の唇が重なった。少し半開きのキッドの口にモニカの唇が押し付けられる。キッドの下唇をモニカは優しく自分の唇で挟み何度も愛撫した。次第にキッド の唇も動き出し二人のキスは絡むように激しいものと なった。

モニカはキスを止めてキッドに抱きついて耳元で囁いた。

「抱いて」

その言葉にキッドの体は反応した。キッドはためらうことなくモニカの首筋にキスをしてそっとソファにモニカを押し倒した。その後二人は本能のままに体を絡 ませていった。

女に興味がないといいながらも、キッドの体は嘘をつけなかった。本当はただ強がっていただけなのかもしれない。モニカを抱いたのも昔のことを思い出し今の 自分が惨めに思えて誰かにすがりたい、すがってみたい衝動にかられたからであった。

キッドが絶頂に達したとき自分の力が抜けてモニカに覆いかぶさって気が遠くなっていった。そしてそのままキッドは眠ってしまった。気がつくとソファでブラ ンケットを掛けられ一晩中眠っていた様子だった。しかしモニカの姿はもうそこにはなかった。ただメモ書きがテーブルの上に置いてあるのが目に付いた。

「キッド、仕事があるので黙って先にでていくわ。なんでもあなたの好きなようにして。もしまた会えることがあるなら。昨晩のことは忘れてくれていいわ」

キッドは紙をくしゃっと握った。

「馬鹿、忘れられるか」

しかしモニカに昔会った事はまだ思い出せないでいたことに気がつくともう一度アルバムを開いた。

「一体どれがモニカなんだ」

ふとある写真の隅の方に少しふくよかな女性が箱を持って裏方の手伝いでもしているような姿に目がいった。それを観てロニーが言ったぽっちゃりとしていたと いう言葉を思い出した。

「これがモニカ、名前こそ知らなかったけど、確かによく世話をしてくれた。まさかこれがモニカなんて今の姿から想像もつかないぜ」

キッドはその写真をみて微笑まずにはいられなかった。

キッドはJ9基地に戻ったが、なぜかボウィにばれて冷やかされはしないかと昨晩のことは知られたくなかった。

「ようキッドさんよ、昨晩は楽しんできたかい?久しぶりのことだったんだろ」
「えっ、な、何がだよ、久しぶりって」
キッドは焦った。
「はぁ?どったの、キッド。ロニーと何かあったのか?」
「ああ、ロニーか、もちろん楽しかったよ」
「なーんか怪しい感じがするな、キッドさん。さてはかわいこちゃんとなんかあったの?」
「ば、馬鹿、お前なんてことを」
焦るキッドに益々怪しいとにらむボウィ。
「いやーキッドさんも結局は男だったのね。いつも女に興味がないとかいってたくせに」
「ボウィ、いい加減にしろ」
キッドの手は銃に触れていた。
「ばか、冗談に決まってるだろ。もう冗談も通じないんだから」
ボウィはそのままお手上げとでもいうように去っていった。キッドは息をふぅっと洩らした。

J9基地にいればまたいつものアウトローの生活。依頼があって命張った仕事をこなす。昔のような希望こそないが、今の生活もまた自分が選んだ人生のうち。 それにそんなに悪くないのも確かなことでもあった。それならやれるところまでやってみようと自分の境遇を真っ向から受け入れてやるという気持ちでいた。過 去は無理やり忘れることなく自分が作った後ろにできた道でもある。消すことなんてできはしない。それならしっかりと刻み込んでやるとキッドの心は霧が晴れ るようにどこか自分なりの答えをみつけたようだった。

自分の弱みを見せることがかっこ悪いことだとばかり思っていたが、モニカが受け止めてくれたことにキッドは「これが安らぎか」と呟く。暫くはモニカのこと を考えていたがそうもいかなくなった。

カーメン・カーメンが急に勢力をつけ、この世の中の情勢が悪い方向へと傾いていく。いずれはヌビアとの命を張った戦いが来ると思うと悠長に自分のことなど 考えていられなくなった。これからどこへ行く、どの方向に進むのか全く先が読めない。

そんなときにルチアーノ・マレッティとの出会い。かつての射撃チャンプは殺し屋となり短い命の中で必死にもがいていた彼の生涯を目にして自分と重ねてし まった。完璧な射撃の腕をもつ彼を超えたかったのは事実だが、彼もまた一人の男として苦悩していた姿を見ると他人事には思えなかった。

ふとまたモニカに会いたくなる気持ちを抑えられずにキッドは彼女の家にと向かった。しかしもうそこには彼女はいなかった。

『もしまた会えることがあったら、昨晩のことは忘れてくれていいわ』

彼女のメモ書きを思い出してその言葉の意味を考えるキッド。

「もう会わないつもりなのか」

そしてモニカのことを思い出せば思い出すほど疑問が湧いてきた。

『彼女にはとても好きな人がいるみたいで他の男には見向きもしないんだから』

シェリーがいっていた言葉と彼女の行動が合わないことに気がついた。

「どういうことだ。なぜあの時俺に・・・」

キッドは益々モニカがわからなくなった。自分に同情しただけなんだろか。しかしそういう自分はモニカをどう思っているかもわからなかった。ただの都合のい い女、そんな風には思いたくない。少なくとも気になる存在には変わりない。もう一度モニカに会って確かめないといけないと思うとキッドはロニーを尋ねるこ とにした。

ロニーはまたレイダースの活動を始めていた。慈善コンサートの再結成後は音楽精神が蘇り各地でコンサートを開いていた。

「丈太郎じゃないか。また来てくれて嬉しいよ。あれからJ9の噂をよく聞くようになったよ。これからの時勢お前みたいな奴が必要なんだな」
「なあ、ロニー、モニカのことだけど、思い出したよ。彼女の昔の姿」
「ああ、驚きだろ。女って変わるもんだよな。お前そんなことをいいにきたのか?」
「いや、そうじゃないんだけど、近くまで来たからコンサート練習の風景をまた見たくなったんだ」
キッドは嘘をついた。
「お前、馬鹿だな、昔から嘘をつくのが下手だったけどさ。俺もお前の心くらい読めるぜ」
キッドもロニーもお互い嘘はつけない間柄だった。

「残念だけどモニカなら婚約したぜ」
「えっ、誰とだよ」
それは驚きだった。キッドは思わず声を張り上げた。
「仕事関係で前からしつこく結婚を迫られていた奴だってシェリーから聞いたよ。なんでもずっと好きだった人にふっきりがついたんだってさ」
「ふっきりがついた?」
「ああ、彼女には昔から好きな人がいたらしいんだけどもうそれは大切な気持ちとしてずっと心の小箱にでもしまっておくことにしたとか。まあもう望みがない と思ったんじゃないのかな。それにしてもどんな男を思い続けていたんだろう」

キッドは益々わからなくなった。その後はたわいもない会話をロニーと交わしそしてまた何か腑におちないとでもいう気分でJ9基地に戻った。

「あら、キッドちゃん。どこか気が晴れないお顔ね。どったの?」
「いやなんでも」
「あっ、そういえばキッド宛てに手紙が届いてたわよ。ポンチョが頼まれたとか言ってもってきたわ。ベッドの上に置いといたからね。かわいこちゃんからのラ ブレターだったりしてね。ポンチョはなかなかの美人だったっていってたし。隅におけないわね」

お町はウインクするとキッドの前から去っていった。キッドはゆっくりした足取りで自分の部屋に入り、ベッドの上の手紙を手にした。


Dear キッド

もう聞いているかもしれないけど、私は婚約しました。
あの日のことは私は後悔していません。
むしろそうなることを望んでいたの。
あなたには感謝の気持ちで一杯。
私がこんなにも変わることができたのはあなたのお陰でもあるから。
私がいじめられてたときあなたはそれをみて私に言ったの
「なんだって変えようと思えば変えられる。負けるなよ。なんでも一生懸命やればどんな人間も輝きを増すんだぜ」って。
あなたは覚えてないでしょうがその言葉は私にはとても励みになった。
その時からずっとあなたが好きだった。
いつかはあなたにみとめられるような女性になりたいとまで思ったくらい。
またあなたと再会して私はとても嬉しかった。
だけどあなたは変わってしまったのね。
あの頃の輝きにかげりを感じたわ。
人に話せないことを沢山抱え込んでいるようにもみえたわ。
だから今度は私が力になりたかったの。
できることならずっとあなたの側にいたかった。
でもそれは許されないことだと思ったわ。
あなたはこれからもっと自由に自分の生き方を貫く人だから私が側にいれば重荷になる。
でもいつまでもあなたを好きなことには変わりないわ。
あなたの幸せをいつも願ってます。
過去に負けずに自分の信じるがままに生きぬいて、キッド。
あなたに出会えて本当によかった。

愛を込めて モニカ


キッドは手紙を読み終えると窓から外を見つめふっと息を漏らすように笑った。

昔バンドの世話をしてくれたモニカが他の追っかけの女の子達に嫌味をいわれていたのを思い出した。モニカがロニーの妹の友達だったこともあってロニーの近 くにいたことが嫉妬に繋がり太っていたことでひどいことを言われていた。だからキッドはとっさに励ましてやった。

「まさか俺の一言が美人を作り出していたなんて」

それがおかしくもあった。しかし自分が振られたことにはかわりないとも思えてそれも笑わずにはいられなかった。いやむしろそうした方が自分でも楽だった。 モニカの言い分に一理あるのも納得してしまう。これから迫る大きな戦いを目の前に恋だのとうつつを抜かしてもいられないのは自分でもよくわかっていた。

キッドは新たに後悔のない人生を送らなければと暫く目の前の広がる宇宙を自分の部屋の窓からただ見つめていた。

果てなどないといわれる宇宙、それでもどこかに終わりはあるのか。
自分の人生振り返る暇などない、振り返るときはこの世を去るときでいい
それまでひたすらに行きぬけキッド

終わり


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