13創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『見られた心』

「カーメン様、オルセスの像が何者かによって盗まれてしまいました」
顔を青くしながら自分が殺されるのではと不安な面持ちでカーメンに使える男の声は震えていた。

「構わぬ。またいずれここへ戻ってこよう。オルセスの像は私から離れる訳がない」
オホホホホホホと高笑いしながらマントを翻し宮殿の奥へと姿を消すカーメンであった。

  オルセスの像とは高さ20cmくらいの古代のエジプトの人を形どった石で出来た像である。その顔の表情は怪しく男かも女かもわからなかった。カーメンのコ レク ションの一部として宮殿に保管されていたものらしい。

「オルセスの像が私の元をたった。私の使命が近づいてきた印」

  独り言を言いながら不気味な笑いを浮かべるカーメンにはそのニュースはどこか歓迎しているようでもあった。


   一方地球で一仕事終えたJ9一同、アステロイドへ帰ろうとブライスターをぶっ飛ばしていた。
「今日もまた無事に終わったぜ。ああ俺ちゃん疲れちゃったもんね」
「ボウィ、仕事はまだ終わっていないわ。無事にあたし達を基地まで届けてよん」
お町が色っぽく言った。
「ハイハイ、わかってますよ。俺ちゃんはどんなときでも一流のドライバーですよ。それくらい朝飯前ってもんですよ。皆さんはどうぞ昼寝でもしてて下さい な」
ボウィはいつもの軽い調子で答えながらたまに前から来る隕石をひょいとよけながら操縦していた。
 「ボウィ、いつも最後まで働くのはお前だ。たまには俺が操縦代わってやろうか」
キッドはどうせ代わることはないだろうと思いながら冗談っぽく言った。
「あんがとね、キッド。でもどうせ俺ちゃんが代わらないと思っていってそんなこと言うんだろ」
「ああ、わかっちゃってるの。そんなら強行突破で無理やりハンドルうばっちまうぜ」
「あ、馬鹿よせキッド」
二人がもみ合っている姿を少し口に笑みが浮かんでいるような表情でアイザックは上から見下ろしていた。

「ちょっとあんた達、やめてよ。事故ったらどうすんのよ」
お町は二人の度が過ぎるパフォーマンスに嫌気がさした。

  すると前方から宇宙船がブライスターへと向かってきていた。お町はすぐに気が付いてボウィに忠告した。
「ちょっとボウィ前を見て、このままじゃぶつかりそうよ」
  ボウィもキッドも前を見てはっとした。よろよろと小型船がこっちへ向かっている。危ないところでよけたものの、その宇宙船はどうやら操縦コントロールを 失っているようだった。

「なんだか様子がおかしい。お町、あの船に通信するんだ」
アイザックがいつもの鋭い表情に戻りお町に指示を出した。お町は緊急通信を入れるが相手からの反応は得られなかった。

「おかしいわ。何も反応がないわ。あのままではどこかに落ちるか隕石にクラッシュするわ」
お町は怪訝そうな顔をして目の前の画面を見ていた。ボウィは小型船の後を追うように進路を変えた。そして小型船の隣りにぴたりとついたとき操縦席にはうな だれた男が見えた。その隣りにはもう一人少女らしき子供がブライスターを見ていた。

「操縦者の様子がおかしい。それに子供が一人乗っている。助けるんだ。ボウィ、ブライガーで宇宙船を捕獲しろ」
アイザックが指示を出した。
「ほいきた!」
ボウィは素早くブライガーに変形させそしてその宇宙船を三本のカギ爪で掴んだ。近くの安全な場所まで運びそこへ置くと一同はすぐにその宇宙船の中へと入り 様子を伺った。

  お町がうなだれた男の首元を触って暗い顔をした。
「ダメだわ。死んでいる」

  ボウィが隅の方で無表情で自分達の方を見ている女の子に近づいた。
「お嬢ちゃん。大丈夫かい。もう心配はないよ」
女の子は黒髪のおかっぱで目は透き通り、それは薄い水色の水晶のようだった。そして表情を変えずにボウィの目を見た。

  ボウィはその瞳に吸い込まれるような感覚を覚え急に自分が宇宙の中に少女と二人でいる錯覚に陥った。氷に囲まれたような冷たさを感じ体は震えていた。

「おい、ボウィ。どうしたんだよ。お前こんな少女も恋愛の対象なのか」
キッドが動かないボウィをおかしく思いながらまさかロリコンかとボウィの頭を帽子の上から押さえ付けてやった。それにハッとしたボウィだった。

「お、俺ちゃん、今・・・」
「ん? どうした」
キッドが不思議な顔をしてボウィの顔をみたがボウィはそれ以上言葉を発しなかった。

「アイザック、この子どうする?」
お町が聞いた。
「まずはこの宇宙船を調べるんだ。どこへ行こうとしてたかそれがわかればこの子も行くあてがあるだろう」

「なあ、君名前くらいいえるか」
キッドが少女に話しかけた。するとまた少女はキッドを無表情でじっと見つめた。キッドもまたボウィと同じように宇宙をさ迷う錯覚に陥り寒さを感じていた。 そして突然に恐怖を感じ無意識に右の腰のブラスターを取出し女の子目掛けて目標を定めていた。

「ちょっとキッド、あんた何やってんの」
お町がそれをみてキッドの手を押さえ付けた。キッドははっとして我に返った。
「お、俺、今何を」
キッドはその場に立ちすくむように暫く動けなかった。
「何をって、キッド一体どうしたの。こんな無抵抗な女の子に銃を向けるなんて馬鹿げてるわ」
お町は女の子が脅えていると思い側に寄って抱きしめてあげた。

「ごめんね。怖い思いしたでしょ。もう大丈夫だから。今はショックで何も言えないのよね。安心してお姉ちゃんが守ってあげるからね」
お町が女の子と同じ目線にしゃがみこみ肩に両手を置いて女の子の顔を覗き込んだ。するとやはりお町もその目に吸い込まれるように辺りが急に暗くなるのを感 じた。体は小刻に震え息 苦しくなっていった。

  アイザックはお町の異変に気が付きお町の名前を呼んだ。するとはっとするようにまたお町も我に返ったが体は思うように動かなかった。

  相次ぐ三人の奇妙な行動にアイザックは睨みを聞かして少女を見つめた。少女はアイザックを睨み返すように見つめた。アイザックもまた突然宇宙に放り出され る錯覚を覚えたが、三人とは違って意識がはっきりとしていた。しかし寒気を感じていた。

「お前は何者だ」
アイザックが尋ねても少女はただアイザックの目を見るだけだった。そしてアイザックもまた突然の絶望感が襲い掛かりそれを堪えるのに歯を噛み締めた。それ を見た女の子は笑みを浮かべ口を開いた。

「最初の男は孤独感の心を持つ。私に銃を向けた男は恐怖心を拭おうとした。女は悲しみと苦しみで心を自ら縛り付けた。そしてお前は絶望感の苦しみと恨みを 持つ。それぞれの心を覗いてやった。お前たちは弱い人間の集まりにしかすぎん」

  アイザックは電磁ムチを手に取り少女目掛けて威嚇するように打ち放った。すると少女は素早く飛び上がったかと思うとその姿は突然嘲り笑うカーメンの姿に変 わった。

「己れ、カーメン・カーメン」

「おほほほほほほ、所詮私の敵ではない。お前たちには私は倒せん。J9またいずれ会うときがあろうぞ」
カーメンはそう言い残すとすっと煙が引くように姿を消した。四人は暫くその場所で立ちすくんでいた。

  アイザックは足下に転がっているものに気が付いたと同時に我に返った。それを拾い上げじっと見ていた。それはカーメンのオルセスの像であった。そして他の 三人もやっと体が自由に動けるようになって辺りを見回した。さっきまで隅に居た女の子がいないことに気が付くと幻を見てた気分になった。

「なあ、ここに女の子いなかったっけ。それとも俺ちゃんの錯覚だったのかい」
ボウィが自信なさそうに言った。
「いや、確かに俺も見た」
キッドも弱々しい声で言った。
「もちろん私もみたわ。もしかして宇宙をさ迷う幽霊だったってことはないでしょうね」
お町がそう答えると三人はぞっーとするような表情になった。

  三人はお互いを見つめていたが、それぞれ自分の陥った気持ちを悟られたくなかったので少女の目を見つめておかしくなった事だけは触れなかった。アイザック はオルセスの像を握り締めながら事 の経緯を順序だてて整理しようとした。

「この船の事をマカローネ所長に報告して、みんな帰るぞ」
「ねぇ、アイザック、その手に持っているものは何なの」
アイザックはお町にそう聞かれても何も答えずオルセスの像をその場に置いてその船を後にした。三人はそのオルセスの像をちらりと見ると再び先程味わった感 情が蘇るようになりすぐに目をそらしアイザックの後 を慌ててついていった。

「カーメン・カーメン。いずれ決着をつけるときが近いだろう」
アイザックは心の中で呟いた。

  オルセスの像はひっそりとした宇宙船の中で怪しげな微笑みを浮かべているように去っていく四人を見ているようだった。

  J9基地ではそれぞれおどける事も会話をすることもなく静かに皆自分のしたいことをしていた。しかしそれぞれの心の中は少女に見つめられた時の感情がつき まとい気になって仕方なかった。それは恐れていたものであり、また隠していた感情でもあった。

  ボウィは帽子のツバに触れながら幼少時代の孤児で辛い思いをしてきた孤独感を思い出していた。一人で負けずに這上がり最年少でチャンプの座についたとはい え、いつも孤独感は付きまとう程寂しい部分は排除できないでいた。

  キッドは銃を磨きながら人生の絶頂期を味わいその後スピードが加速するように滑り落ちていった自分の過去を考えていた。強がっていても突然やってくる不安 な未知の恐怖心が表面に出てくるのをおそれて銃をいつもより強く磨いていた。

  お町は頬杖をつきながらテーブルで雑誌を見ていた。ウエディング姿の写真に目が止まると少女時代にに描いていた夢や希望が今では悲しみとして蘇り心が苦し くなった。雑誌を閉じてぼーっと一点を見つめた。

  アイザックだけがただ一人いつもと変わらない様子でコンピューターで何か調べものをしていた。しかし時折どこか歯を食いしばっているようにも見えた。

「なあ、俺ちゃん達もし出会わなかったら何やっていたと思う」
ボウィが突然静けさを破った。
「そだな。俺なんてもうとっくに野タレ死んでたかもしんないぜ」
キッドがそう答えると
「あら、サバイバルの王者のキッドがそんな事ないでしょ」
お町が返した。
「我々は必ずどんな状況においても出会っていただろう」
アイザックが話に割り込んだ。
「だからこうやってみんなで出会ったってことなのね」
お町もそれに合わせるように答えた。
「ああ、そういうことだ」
アイザックの表情は少し微笑んでいた。それを見ると残りの三人も自然と微笑みを返した。

「これからは呑気に構えてられないかもしれない。それでもJ9のメンバーとしてまだ一旗挙げる覚悟は出来ているかね」
アイザックの一言で三人は今の自分の気持ちを吹き消すように親指を立てイエーイとそれに答えるのだった。

その頃カーメンの宮殿では使者が膝まつきカーメンに報告をしていた。
「カーメン様、オルセスの像がこちらに戻ってまいりました」
像を差し出されカーメンはそれを手にとった。そしてオルセスの像を見つめて高笑いをした。その笑いは宮殿で響き渡っていた。

「J9、やれるものならやってみるがいい。私の使命は誰にも邪魔させん」
力強く叫ぶカーメンに周りのものは崇拝の意を表しカーメンを称えていた。


誰にも見せたくない部分を探られ心揺らぐがJ9の名の元に再び 結成を固めるメンバー達。これからは更に強くとことん挑むだけ。それが心を解き放つ。コスモレンジャーJ9、お呼びとあらば即参上!

おわり


Index / HOME

inserted by FC2 system