12創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『キッドのため息 2』

  J9の仕事と言うのも板についてきた。気の置けない仲間との軽いノリの命を張った真剣勝負。アウトローになっちまった俺にはおあつらえ向きの仕事と言え る。必ずしも大金を稼げる訳じゃねぇが、俺にはもう選択の余地は残っちゃいない。追われる身としてはここに身を置き命懸けの勝負をするしか方法はない。そ んなに居心地も悪くはないのも気に入った。

  最初はよくわからなかったアイザックも今じゃ慣れっこになっちまったし、奴は剃刀と言われるだけ頭が非常に切れるのも痛いほどわかったって感じだ。あの仮 面は中々外れないけどまあいつか引っぺがしてみたいもんだ。

  ボウィはいい奴だ。年も同じだし話も合う。あのノリの軽さはこんな重い仕事をしているだけに救われる部分がある。

  お町も女にしとくのはもったいないくらいの腕前だし、まああのお色気は目の保養にもなっていいだろう。どうせ俺は相手にされないだろうけどたまにはきわど く揶揄うのも楽しいもんだ。

  危険な仕事とはいえ、このメンバーならなんでもこなせると思えるほど自信もたっぷりだ。何がでようとただ突き進んでやる。もう過去はどうでもいい。明日が いつもやってくるのなら俺はそれに挑むだけだ。

  俺はボウィを連れて男同士の遊びってものに参加してみた。まあ頼まれた買出しのついでってやつだけど、たまには生き抜きも必要だ。

  ボウィって奴はかわいい女を見るといやらしい目にすぐになる。俺もノリで調子を合わせているがボウィ程女には興味はねぇ。

「ようキッドさんよ、この店もう出ようぜ」
「なんだよボウィ。お前がここへ来たいっていうからついて来てやったのにもう出たいって変な奴だな」
「違うんだよ、ほらあそこにこの間の女がいるんだよ。あれキッドさんも会いたくないだろう」

  俺はボウィの指さす方をみた。そして驚いた。そこにはソアラがいた。なんてっこったい。また彼女に会うとは。しかし彼女の周りにはガラの悪そうな男たちが 数人いた。どうやら絡まれているようだ。俺はそれを見て見ぬふりはできそうもなかった。いくら恨まれている相手とはいえ、ソアラをほっとけない。

「おい、キッド! どこへ行くんだ」

  ボウィが止めようとも俺はソアラの側へ行った。

「ようよう、あんたらよ、女一人に男こんなに集まって何をしようとしているんだ。その手を離しな」
「丈太郎!」
 ソアラは俺が突然現れたんで驚いていやがった。

 俺はソアラが掴まれていた手を離してやろうと男に向かって銃を向けた。男は怯んでソアラの手を投げるように離した。

「お前、何様のつもりだ」
「俺は弱いものいじめしている奴等が許せないだけさ。とっとと消えな」

  そういっても奴等は簡単には消えないようだから脅しに数発撃ってやった。さすがに驚いて悔しそうにお決まりの捨て台詞を吐いて消えていった。

「丈太郎、また会えるとは思わなかった。助けてもらったからといって私の恨みは消える事はない。兄さんを殺された事は絶対に許せない」

「ソアラ、何を言っても聞く耳はもたいないだろうから俺は何も弁解しない。リッキーを撃ったのも事実には変わりないのも確かだ」

  ソアラの目は潤んでいた。俺が憎くて仕方がない目だが、どこか葛藤している様子にも見えたのは気のせいなんだろうか。

  俺はあの2ヶ月の休暇でソアラと楽しんだ事を思い出した。お互い割りきっていたはずだった。しかしあの正気じゃなかったときとはいえ例えキスでも俺は手を 出してはいけなかったと今になって後悔する。

「丈太郎、兄さんはあんたの事が好きだった。それなのになぜ兄さんを撃ってしまったの」

  ソアラはなぜリッキーが俺を恨みそして殺そうとした理由を知らなかった。逆恨みでこうなってしまったことを知らずにいる。俺は説明する気にもなれなかっ た。それをしたって許して貰える訳でもなくリッキーを撃ったという事実も変えられない。

「ソアラ、過去の事はもう変えられない。許して貰おうとも思わない。俺はもう昔の俺じゃないんだ。恨むだけ恨むがいい」
「丈太郎、信じていたものに裏切られた気持ちあんたにはわからないでしょうね。そしてその信じてたものにたった一人の兄を奪われた気持ちなんてあんたには 到底理解できない」
「ああ、理解できないさ」

  俺はもう何を言ってよいかわからなかった。気が付けばソアラに思い切りぶたれていた。ボウィが心配して駆け付けてくれたが、奴も手を出せない事はわかって いた。

  そこへさっきの連中がバイクにのって店に入ってきたかと思うといきなり銃をぶっ放した。標的は俺だった。しかし気が付くと俺をかばってソアラが血を流して いた。

「ソアラ!」

  俺がそう叫ぶと同時にボウィは襲ってきた奴等に交戦していた。俺も身を交して容赦なく奴等に銃をお見舞いしてやった。無駄な数を撃ってくる奴等に対し俺は 的確に弾を無駄にすることなく仕留めてやった。

  すぐにあたりは収まったがソニアは床の上で瀕死になっていた。息が荒らい。

「ソアラなんで恨んでる俺を助けてしまったんだ」
「馬鹿、勘違いしないで欲しい、さっきの借りを返しただけさ。私は許してない」

  ソアラは苦しそうに言った。

「丈太郎、どうしても私は許せない。許せない・・・」
そういいながらソアラは息を引き取ってしまった。最後まで俺を恨んで死んでしまった。俺はまた肩に過去の重みが伸し掛かったようだった。

  ボウィが側までやってきて俺の肩に手をおいた。
「なあ、キッドさんよ。過去に何があったかしらないが、彼女が許せなかったのはキッドさん自身じゃなくて自分のキッドさんに対する気持ちじゃないの」

  俺はボウィの言っている意味がわからなかった。

「だから彼女は許したくても許せない自分の気持ちに腹を立てていたんじゃないかってこと。その気持ちをぶつけるところがなくて目の前にいたキッドさんに向 けるしかなかったんだよ。そうすることが自分でも楽だったんじゃないのかな」

  俺はボウィの言葉の意味を考えていた。息を引き取ったソアラを見つめると楽しかった時のソアラの笑顔が目に浮かんだ。ソアラは俺の事が好きだったんだろう か。そしてその好意を持っている奴に兄を殺されてしまった。

『信じてたものにたった一人の兄を奪われた気持ちなんてあんたには 到底理解できない』

  ソアラの言葉が耳に残る。

  俺なんかと関わってしまったためにリッキーもソアラも俺の不運さに巻き込まれてしまいやがった。ひたすら明日に挑むなんて言っておきながら俺は自分の弱さ に心を支配されてしまった。暫くはリッキーやソアラの 事を考えていたい、自分の気持ちが収まるまでは。

おわり

※第二話の本編ではソアラは生き延びてますが、小説「銀河旋 風ブライガー」ではソアラは死んだ事になってました。


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