11創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『キッドのため息』

  エロス連合を倒してJ9一同基地に戻る。ボウィもお町もJ9結成後の二つ目の仕事が上手くいきお金が入ったことを素直に喜んでいる。これがJ9の仕事かな どと軽く話している。しかしキッドだけどこか黙り込んでいた。アイザックはキッドの様子を気にしながら表情は変えず何も言わずにキッドと目を会わせた。 キッドはアイザックが何をいいたげなのかすぐに悟ったと同時に
「俺、ちょっと休ませてもらうぜ」
と言ってその場を去った。

 「あら、キッドちゃん。J9の仕事にもうお疲れかしら」
お町がからかう感じで言うとボウィも調子にのって言った。
「さてはあの子の事が気になってんじゃないの。悪ぶっていたけど結構かわい子ちゃんだったからね。もしかしてキッドさんの元ガールフレンドだったりして ね」

「なんとでも好きに言えばいいさ」
キッドは好きにしてくれとでもいうようにこれ以上相手になりたくない様子で自分の部屋へと向かった。その様子を見てお町とボウィはお互い見合わせてキッド が会話にのってこない事にどこか物足りなさそうに苦笑いをしていた。

  キッドは自分のベッドに横になり、両手を頭の後ろに置いて天井を見つめて過去の事を思い出していた。

  地球正規軍隊特別射撃隊入隊時の初めての実地訓練で過酷なサバイバル訓練を終えた後の二ヶ月間の休暇の時のことだった。アカプルコ湾でのクルーザの上で ロックバンド仲間のロニーと汗をかきながらギンギンに酔いしれたダブルネックの演奏。正気を失うほどの騒ぎようだった。それがキッドにはとても楽しい一時 だった。

  そこへ射撃仲間のリッキーと妹のソアラも駆け付けて一緒に騒いだ。サバイバルという過酷なことを経験した後だっただけに激しくその時を楽しもうとあの時は 誰も手をつけられないくらいの騒ぎようだった。そしてそんな状況でのソアラとの楽しい日々。女にはあまり興味のないキッドだったが昔から知っているソアラ にはその時の雰囲気で手を出してしまった。好きとかそういう感情じゃなくお互いあの時は楽しければいいというそれだけの理由で恋人ごっことでもいうのか甘 えるように抱き合ってはキスをした。欲求を満たすようなものだけだった。さすがに一線を越えるようなことはなかったが、キッドにしてみれば女とベタベタす るのはそれが初めてのことだった。

  ソアラもキッドがベタベタしてくるのはそんなに嫌じゃなくむしろキッドに惹かれていた部分があった。キッドが自分を必要としているのならそれに応えてあげ たいとさえ思っていた。あの時は開放的な南の青い空の下にいると誰もがいつもと違う自分になれるような気分にさせられた。キッドにとって最高の人生とでも 思えるような時でその後正規軍始まって以来史上最年少十七歳という若さで正規軍特別射撃部隊『紅バラチーム』の隊長を命じられた。

  しかし頂点に上り詰めたあとは必ず下りがある。その後は正規軍の腐敗した組織に失望し無断脱退をして命を狙われる羽目となってしまった。そして生き延びる た めには犯罪社会の間に潜伏するしか道はなかった。キッドが逃亡中に仲がよかったというだけでリッキーはキッドの勝手な行動のためにとばっちりを受け軍を除 隊させられてしまった。それがリッキーの逆恨みとなって無意味な決闘をする羽目となってしまった。

  リッキーとは親友だった。それが自分の信じるままに行動したためにリッキーには迷惑をかけてしまった。しかしリッキーはキッドの事が理解できず自分が除隊 されたことがキッドのせいとしか思えなかった。リッキーはキッドの事が許せなかった。

  ニューポートの沿岸通りでリッキーはキッドを待ち伏せした。もう耳を貸す余裕すらなくキッドを殺してしまおうと本気だった。キッドは自分のせいでリッキー が除隊させられたのは申し訳なく思ったが、自分もまた信じるままに突き進んだことは後悔していなかった。ただリッキーとは決闘などということはしたくな かった。

  結果的にはとっさのことに余裕がなくリッキーを殺してしまったが、また今度はソアラに恨まれる羽目になってしまった。キッドはことごとく自分に付きまとう 不運さを恨んだ。

「ソアラは決して俺を許してはくれないだろう。またいつかどこかで会ったとき容赦なく俺を殺そうとしてくるに違いない。そうなったとき俺はソアラに銃をむ けることはできないぜ」

 キッドは深くため息を一つ吐いた。そしてもう戻れないと思うと覚悟を決めたように前を突き進むだけだと自分に言い聞かせ側にあったダブルネッ クを手に取ると演奏を始めた。そして激しく自分の心の霧を吹き飛ばすかのように演奏した。

  その音は外にも洩れてアイザック、お町、ボウィの耳にも入った。

「キッドったらギターの演奏をしているわ。中々の腕前ちゃんみたいね」
お町が誰に話している訳でもなく独り言のように言った。
「キザッぽいかっこつけの男かと思ったけど芸術家でもあるところをみるとかなり繊細な部分もあるんだろうね。まだ知り合ったばかりでよくわかんないけんど ね」
ボウィが言った。
「これからお互いの事が少しずつわかって行くことだろう」
アイザックがそういうとお町もボウィも先が楽しみとでも言わんばかりに『イエーイ』と指を立ててそれに応えていた。


  知り合ったばかりのメンバー同士の命懸けの仕事。それぞれの過去を誰にも言えずに秘めながらただ明日に挑む。コズモレンジャーJ9。お呼びとあらば即参 上!

 
おわり

この続きがまだあります。ソアラとまた再会しキッドの視点で話が進みます。是非こちらと同様にお読み下さい。
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 ※小説「銀河旋風ブライガー」にリッキーとソア ラの事が少し載ってました。それを参考にしてキッドとソアラの関係を少し書いてみました。一部は私の想像ですが、著者の山本優さんの話の筋に基づいてま す。

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