10創作 銀河旋風ブライガー
by Cocona

 『本物と偽物のJ9』

「なあ、俺ちゃん達って影のポリスって言われちゃってるけどさ、存在自体公表できない立場じゃなかったっけ。それなのに結構名前が知れ渡ってしまっちゃっ たみたいね」
ボウィが手を頭の後ろに組みながら大きく椅子にもたれて座ってキッドとお町に語りかけていた。キッドは足を机にどっしりとおいて例のごとく白い布を出して 銃の手入れをしていた。お町は雑誌をテーブルに置いて左手で顔を支えてパラパラとめくっていた。
「いいんじゃねぇの。どうせ隠し通せるもんじゃなしに」
キッドはどうでもいいとでも言うように答えた。
「そうそう、今更知れ渡ったところでどうにでもなる訳でもないもんね。これで反って仕事が増えて儲けがガポガポかもよ」
お町も呟いた。
「まあ、お金が降って沸いてでるんだったら俺ちゃんも文句なしだけんどさ、それだけ命はる機会も増えるって事になるのかな」
「まあそういうとこ」
あまり真剣になる話でもないかというようにお町は適当に答えた。
「ボウィ、なんだ今更怖じけついたのか。そんなに怖いなら降りてもいいんだぜ」
キッドがからかうように言った。
「おや、この俺ちゃんが怖じけつくですか。そりゃないぜキッドさん。俺が降りたら誰が子猫ちゃんを操縦するの。俺ちゃんしか乗りこなせない代物なのに」
「さあ、探せばいるんじゃねぇの、ボウィよりも腕の立つ奴」
「キッド、冗談きついぜ。俺ちゃんは子猫ちゃんを誰にも渡したくないぜ。そういうキッドはどうなんだよ。自分が殺られるなんて思ったことないのか」
キッドは突然磨いていた銃を構えてボウィに向けた。
「この俺が殺られる訳がないだろう。口に気をつけなボウィ」
「おー怖〜。さすが自信過剰なキッドさんだぜ。いつでもキザなんだから」
鼻で笑うようにふんと言ったかと思うとキッドは
「またこいつで暴れまくりたいぜ」
と一言いいながら再び銃を磨きだした。

三人は特に何もすることなく談話室でゆっくりとしていた。そこへポンチョからの連絡が入りアイザックに呼ばれた。三人は仕事かと退屈な時間がこれで紛れる とでも言わんばかりだった。

「大変でゲス。J9の偽物が出たでゲス。J9の名を語り仕事を請け負ってる奴等がいるみたいでゲス」
「あら、最近名前が知れ渡ったせいで私達の名を語って金を騙し取ろうとする奴等が増えたってわけね」
お町はよくある事だわとでもいうような感じで言った。
「それが違うんでゲス。騙すところかちゃんと仕事をして喜ばれてるんです。これは商売がたきっていうやつでゲス。そうなると本家本元のJ9に仕事が来なく なるでゲス」
一同は唖然とした。こんな命をはって危ない仕事をする奴等が他にいるなんて考えられなかった。
「うひょー、そうなると俺ちゃん達と同じぐらいの腕を持ってるってことになっちゃうのかな」
「まさか、俺達と同じ腕を持つ奴等がいるなんて考えられないぜ」
ボウィとキッドはお互い顔を見合わせた。
「ポンチョ、詳しい事を教えてくれ」
アイザックも商売がたきが現れたときいて相手の素性が知りたくなった。
「それがでゲス、詳しい事は分からないんでゲスけど、この記事を読んだんでゲス」
ポンチョはあまり知られていないような雑誌を見せた。その記事には『影のポリスか噂のJ9!悪をバッサリ斬る』と見出しがあった。
「てっきり皆さんの事だと思って思わず読んだんでゲスが、事件の内容はあっしが仲介したこともないような事が書いてあったでゲス。これは他にJ9の名を 語って商売を横取りする奴等がいる証拠でゲス」
一同は考え込んだ。今までJ9の名を語り金を騙し取るケースはあったが、まさか自分達と同じ仕事をする奴等がいるとは信じ難かった。
「ポンチョ、その記事は誰が書いたか分かるか」
アイザックが尋ねた。
「そう来ると思って事前に調べたでゲス。ケリー・ノートンという奴でゲス」
「すぐそいつと連絡を取って詳しい事を聞いてくれ」
アイザックがそういうとポンチョは通信を切った。

「私達と同じ仕事をする奴等が出てくるなんてね。でもなんでJ9を語らなくっちゃならないのよ。ライバルなら違う名前を使えばいいじゃないの」
お町は同業者が現れる事は構わないが同じ名前を語られる事が嫌だった。
「だけど、俺ちゃん達みたいな奴等がいるなんて会ってみたい気もしちゃったりして。なあキッドさん」
「ああ、俺みたいな奴がいるのなら勝負してみたいってとこだぜ。アイザックはどう思う。剃刀アイザックに対抗できるような奴が他にいたらさ」
アイザックは何も語らなかったが、J9を語って仕事をされる事に抵抗を感じていた。

数日後ケリー・ノートンの居場所がわかりポンチョはJ9基地まで連れてきた。ケリーはどこが落ち着かない様子で少し怖がりながらもなんとか踏ん張ってポン チョの後をついていた。
「皆さん、ケリーさんを直接連れてきたでゲス」
そう紹介されてケリーはポンチョの後ろからひょっこりと顔を出した。
「あら〜、ケリーって女性だったの。しかもかわいこちゃんじゃないの。俺ちゃんてっきり男だと思ってたよ」
口笛を吹きながらボウィは恥ずかしがって立っているケリーをまじまじと見つめた。ケリーは丸顔で少しくるくるっと癖がある茶色い髪が肩にかかっていた。背 はまあまあ女性にしては高い方だった。
「よ、ケリーとか言ったな。一体俺達の名を語って仕事する奴等はどこにいるんだい」
キッドがケリーを見つめて単刀直入に尋ねるとケリーの顔は急に赤くなった。ケリーはキッドの顔をまじまじとみていた。
「私、その、あの」
しどろもどろになりながらその場に突っ立ってるとお町が助け船を出した。
「ケリー、安心して私達は何もあなたをいじめようとは思ってないのよ。ただ私達が本当のJ9だと言うことを知って欲しいの」
「そういうこと、そういうこと。俺ちゃん達と同じ仕事をしている奴等の事をちょいと小耳にはさんだんだよね、君の記事でね。そいで奴等の事を少し教えて欲 しいって訳」
ボウィも付け加えた。ケリーはいつまでも黙っていてはいけない気持ちになって何か言おうとするがどうしても上手く言葉にならずになぜか落ち着かず焦りが体 から出ていた。それでもやっとの思いで言葉を発した。
「あの、彼らの素性は証さないと言う約束で私は記事にしました。だから何も言えません」
そういうとキッドは呆れてしまった。
「おいおい、偽物をかばうのかい。何度も言っているが俺達が本物のJ9なんだぜ」
ケリーはキッドを見るとまた顔が赤くなってしまったが勇気を出して言った。
「それなら私にあなた達の記事を書かせて貰えませんか。密着取材させて頂きたいです。そしたら本当のJ9だって紹介できると思います」
アイザックはそれを聞いて厳しい表情をした。
「私達の存在自体は公表していない、密着取材は断る。あなたが偽のJ9をかばうのならそれでもよし、これ以上は詮索しないでおこう」
それを聞いて残りの三人は不完全燃焼のような中途半端な気持ちになった。そうしてケリーはJ9基地を去ったが、去る前にもう一度だけキッドの顔をみた。お 町がその様子をみてにやりと笑ってキッドに耳打した。
「彼女、どうやらキッドに一目惚れしたみたいね。さすが色男ね」
「ああ、また俺、女の子泣かしてちまうみたいだな」
キッドはよくある事さとでもいうように嬉しくもなく他人事のように答えた。
「ちぇっ、キッドさんばかりがなぜモテる。俺ちゃんだったらすぐにデートしてあげるのにね。男見る目ないね、彼女」
「あら、ボウィ。ひがむ男ってカッコ悪いわよ」
「はいはい、どうせ俺ちゃんはカッコ悪い男でござんす。俺ちゃんの本当の価値が分かる女の子だって星の数ほどいるってもんよ」
しかし三人はそんなことよりも偽のJ9が気になって仕方なかった。どうにかして正体を突き止めたかった。するとお町が指をパチンっとならしてウインクし た。
「ねぇ、ねぇ、良い考えがあるわ」
そういうとキッドとボウィに小声で話した。するとキッドが嫌な顔をした。
「なんだって俺がケリーにデートを申し込んでそれにつけこんで詳しい事を聞き出すだって。そんなのごめんだぜ。第一、俺あの子には興味ないぜ」
「だから言ってるでしょ、ただのフリよフリ。彼女キッドに興味がありそうだからそこを利用して聞き出すのよ」
「キッド、いいじゃないか。デートくらい減るもんじゃなし。俺ちゃんが本当は代わりたいぐらいだぜ」
キッドはデートはともかく偽のJ9の情報が知りたかったので嫌々ながらも受ける事にした。しかしこの事はアイザックには内緒と言うことにした。万が一ばれ てもデートというプライベート的な話までは関与することはないだろうと思ったのでそんなに深刻な問題だとこの時点で三人は思わなかった。デートと言っても ボウィとお町が様子を後から見るといったことでまさに作戦そのものになった。ケリーの居場所をポンチョから聞くと三人はケリーに会いに出かけた。ケリーは 小さな出版社で記者をしていた。建物の窓越しに彼女の様子を見ていると初めてあった時の恥ずかしさの表情から程遠い真剣な眼差しをしてたくましくみえた。 そのギャップに三人は別人かと思った。ケリーは忙しそうにしながらビルの中から外に出てきた。チャンスだと思いキッドがお町とボウィの顔をみて頷くや否や ケリーの前に姿を現した。その瞬間ケリーは驚き顔が赤くなったかと思うとさっきまでの真剣だった表情が崩れてか弱い女の子の表情になった。
「よっ、ケリー」
作戦とはいえこれからデートを申し込む事にどこか抵抗を感じていたキッドだったが、隠れて見ているお町とボウィがいると思うとなんとか割りきれた。
「偶然だなこんなところで会うなんて。一緒にお茶でもどうだい」
キッドは言いなれぬ女性を誘う言葉に自分でも歯が浮くような恥ずかしい気持ちになった。ケリーは驚きで口がポカーンと開いていたが、我に返って慌てて答え た。
「あ、あの、とても嬉しいんですけど今忙しくて・・・後日ということはできませんか。あの、けして嫌で断ってるんじゃないんです。本当は仕事を放っておい てもあなたと一緒に居たいんですけど、あのその、なんていうか、〆切が迫っている仕事なので今時間がないんです」
キッドはそれを聞いて少しがっかりした。自分に気があるのなら仕事を放ってでも来るタイプだと勝手に思っていた。
「わかったぜ。それなら後日ということでいいぜ。その時はデートしようぜ」
キッドは作戦だと割りきっていたので早くデートというミッションを実行したくて露骨に誘ってしまった。その言葉を発した後でなんかやばい事でも言ったかと いう気持ちになった。でもケリーははっきりとそう聞いて恥ずかしがりながらも嬉しさでたまらないとでも言うような笑顔を見せた。
「喜んで」
キッドはケリーと別れて隠れているお町とボウィと合流した。
「ちょっとどうなったの。キッドふられたの」
お町が作戦失敗かと思ったが、作戦は後日になった事を聞くと安心した。
「だけど、彼女あんなに急いでどこに行くんだろうね。ちょいと彼女がどんな事しているか探ってみないかい」
ボウィがそういうと、面白半分で彼女の後を着いていくことにした。
「でもさ、俺達J9だろ、こんな悪趣味な事していいのか」
キッドはどうもこの作戦といい、後をつけるような行動に抵抗があった。でももしかしたら偽のJ9と連絡でも取っているかもと思うとこれも探る仕事のうちだ と言い聞かせた。

ケリーが行ったところはある大きな会社の建物だった。そこに入いろうとすると大きい強面の男達二人に片方ずつ手を掴まれ中に入れないでいた。その様子を見 ていたボウィはつい助けようと体が動いたが、キッドに止められてその場に留まった。三人はケリーの様子を見守る事にした。ケリーはさっきまでのキッドと 会った顔付きではなくまた別人のような表情となっていた。か弱い女の子から程遠い怖いもの知らずの鋭い目付きとなり必死に立ち向かおうとしていた。
「ここを通して、今日はあなた達が裏で悪いことをしている証拠を持ってきたわ。これでもう逃げられないはずよ。会長に会わせて頂戴」
それを聞くと男たちは手を放し何やら携帯電話のようなもので連絡を取るとケリーを建物の中へと通した。その様子を見ていた三人はケリーが何か危ない事をし ようとしているのではと心配になった。後をついて行きたかったがとにかくケリーが出てくるのを待つことにした。もし出てこないときは助けに入る覚悟を決め ていた。

それから30分と時間が経ち、ケリーは出てこなかった。
「ちょいとやばいことになってるんじゃないのかい」
ボウィがそういうとあと10分したら中に入り込もうという事になった。そしてその時間になったとき三人は建物の中の様子を見に行こうと近づいた瞬間ケリー がちょうど出てきて鉢合わせとなってしまった。ケリーもびっくりしたが、三人もどう説明していいか分からなくなるほど焦った。
「J9の皆さん、こんなところで何を」
「いや〜、その、奇遇だね」
ボウィがそういうとお町もキッドも苦笑いをしていた。ケリーはまたキッドに会えたので顔を赤らめながら嬉しそうな表情をした。三人はここをどう切り抜こう か考えていたが、ケリーが何も疑わず偶然出会ったことを喜んだので少し胸をなでおろした。
「J9の皆さんも人には言えないお仕事されていますから私には何もはなせないでしょうね。でも私はまたお会いできて嬉しいです。さっきもキッドに会えて デートの誘いを頂いたところなんです」
恥ずかしげにそう言うとお町とボウィは知らなかったと言うフリをして『やるね〜』と一応キッドを肘でつついた。キッドは皆に合わせてただ作り笑いをしてい た。

「それはそうと君こそここで何をしてたんだい」
キッドがそう言うと、ケリーは真剣な表情になった。
「それは、その、記事の取材です」
ケリーもどこか詳しい事をいえないような立場であった。そしてすぐにまた仕事があるといってその場を去っていった。しっかりとキッドにウインクしてはまた ねと挨拶も忘れずに。

「ねぇ、彼女ってどこかミステリアスじゃない。か弱い恥ずかしがりやの顔が本当なのか、それとも怖い物知らずな表情をする彼女が本物なのか掴み所がない感 じがするわ」
「でも最後にキッドにウインクしてたぜ。恥ずかしがりやだけど自分の思うように生きるタイプじゃないのかな。結構芯の強い感じの女なのかもしんないぜ。俺 ちゃん結構タイプなんだけどね。キッドに惚れてるみたいだし残念」
「何がタイプだよ、女なら誰でもいいって言う奴が」
「あー、キッドさん。それは言いっこなしよ。なんですか、俺は万年襲いたがる狼ですか」
「馬鹿、そこまでは言ってないぜ。ただの女好きってことさ」
「そういうキッドだって一応男でしょうが。理性を失って狼になることもあるんじゃないの」
「一応男ってどういうことだよ。俺は誰でもいいって訳にはいかねぇぜ」
「てな事をいいながら、チャンスがあったらやっちゃうタイプだと思うぜ」
「何〜ボウィ、お前と一緒にすんな」
「なんだよ本当の事言って何が悪いんだ」
キッドとボウィが馬鹿な事を言い合ってる後ろでお町は呆れていた。

そこへさっきの強面の男二人が言い争っているキッドとボウィを通り過ぎケリーが去った方向に歩いて行った。
「ねえねえ、さっきの男達じゃない。何か匂うわ。後をついていってみましょうよ」
お町がそういうと、馬鹿な事で言い争いをしていたキッドとボウィも我に返った。男達の後をつけるとケリーの会社へたどり着いた。何やら隠れて中の様子を見 ているようだった。三人は益々ケリーが何かやばいことに関与して危ないのではと思うようになった。

「ケリー何かやばいことに首突っ込んだんじゃない。何かの取材とか言ってたけどよくあるじゃない会社の悪事を掴んでそれに対抗する記者って。そうなると命 狙われてるんじゃないかしら」
仕事に関しては執念をもってやるタイプに見えたケリーだったのできっとそうに違いないと三人は思った。
「キッド、ここはケリーに会いに行って男たちが外で待ち伏せしていることを忠告した方がいいんじゃないか」
キッドは後の事も考えずにケリーの会社へと入って行った。またキッドが目の前に現れるとケリーは驚いた。キッドが何をどう言うべきか考えているとケリーが その前に切り出した。
「キッド、わかったわ。今からデートしましょう」
思わずキッドは自分が惚れてると勘違いされたと思って気分が少し優れなくなった。しかしそう思われて都合がいいのも確かであった。

二人が会社から出てくるとお町とボウィの方向をみたキッドだったが、何やら顔で訴えるような表情をしてケリーと二人でどこかへと去って行った。その後を例 の男達二人もつけていた。そしてその後もまたお町とボウィもつけていた。

「キッド、私こうやってあなたと一緒に歩くことができて嬉しいわ。理由はどうであれね」
ケリーがそういうとキッドははっとした。ケリーは笑っていた。そして優しくまた語りかけた。
「偽のJ9の情報が欲しいんでしょ。だからわざと私に近づいた。そして今日はずっと私をつけていた。そうでしょ」
その言葉に今度はキッドが面食らったが開き直った。
「なんだ気がついてたのか」
「これでも私は記者の端くれよ。大体の筋道はわかるわ。私ね、J9の噂は知っていたの。そしてキッドの噂も聞いていたわ。ブラスター・キッド、銃の腕前が すごくてかっこいい人だってね。是非記事にしたいって思った。そして初めてあなたに会ったとき想像以上にカッコ良くて私一目惚れしちゃった。でもあなたは 私には興味がないこともすぐにわかった。でも一つだけ知って欲しい。私はあなたが思っているようなか弱い女じゃないことを」
そう言うとケリーは突然バッグから銃を取出した。いきなりキッドに向かって構えるとキッドの肩越しを目掛けて銃を放った。キッドは咄嗟に地面に身を伏せ、 自分もまた銃を構えるとケリーが撃った方向目指して銃を放った。するとそこには男二人が手を押えていた。そして足下には銃が転がり、男たち二人は慌 てて去っていった。お町とボウィが心配してキッドとケリーの元に駆け寄ってきた。
「ケリー、あんたのその腕、銃の撃ち方知っているとみたぜ」
キッドは感心した様子で言った。
「私、あなたに劣らない程の腕前をもっているかもよ」
ケリーのその顔は自信にあふれるような表情だった。その表情をみてキッドは敬意を払うように笑っていた。
ボウィもお町も一体どうなってるのか説明して欲しい顔をしていた。

「さて、私行かなくっちゃ。キッド相手してくれてありがとう」
「ちょっと、行くってどこへ行くんだよ」
「仕事」
そういうとケリーは急いで去って行った。三人は一体何がどうなったのかわからなくなってその場でケリーが去る方向を見ていたが、お互いの顔を見合わせて頷 くとケリーの後を追って走り出した。ケリーは逃げた男達を追っていた。そして男達が自分達の会社の建物の中に入るとケリーもまたその後をついて入っていっ た。ケリーの手にはしっかりと銃が握られていた。

「ちょっと、ケリーったら仕事って一体何やってるのよ。記事書くのになんで銃がいるのよ」
お町が驚きながら自分のように危険に突っ込んでいく姿をみてただならぬ女性だと思った。
「しかも一人であんな組織に殴り込みにかかるなんてすごい怖いもの知らずじゃないの。いやもしかしたら自信過剰なタイプなのかも。俺ちゃんでもあんな事し ないぜ」
ボウィのその言葉にキッドはどこか自分と似ている部分を感じていた。

ケリーは男たちを追って建物の中に入ったものの、中で銃攻撃を受けて軽く左肩と頬あたりを銃弾が擦って血を流した。床に転がりながら柱の影に隠れて応戦す ると、その正確な狙いは確実に敵を倒していた。そこへキッド達も加わりケリーはその様子に気を取られてしまってその隙に敵が撃った銃弾が足の太股あたりを 貫通した。あまりの激痛に苦しんでいるところにキッドが側にやってきて銃で敵と応戦してくれた。
「大丈夫か」
そう一言キッドから言われ、痛みに苦しみながらもなんとか大丈夫だと頷いた。でも顔はそうではなかったのが誰にでも読み取れた。

奥からケリーの名を呼ぶ声がした。それはその会社の会長だった。
「ケリー、話合おう」
そう言葉が響くと辺りは静まり返った。ケリーは痛みをこらえて足を引きずって会長の前に出た。手にはしっかりと銃を構えて。
「あなたと話し合う事はない。私を殺そうとした。約束が守れないのならこの会社の悪事を世間に広めるまで」
「そんな事をしても君に勝ち目はないだろう。新聞、雑誌、あらゆる報道機関に圧力をかけた。君の言う事は誰も信じないだろうし記事にもならないだろう。そ れよりも自分の命の事を心配したらどうかね」

「あんたこそな」
キッドが後ろから銃を構えてケリーを援護していた。
「そうよ、気をつけた方がいいわよ。彼の腕は正確よ」
お町も一言付け加えた。会長は少したじろいだが、ケリーに再び話しかけた。
「とにかくケリー、君一人が動いても何も変わらないんだ。命が欲しければ諦めるんだな」

「嫌だ、私は苦しんでいる人達から依頼されたんだ。この会社が騙し取った金を取り戻すことを。そうしなければ悪事の証拠を公表するとね。どれだけの人が嘘 や脅迫じみた悪どい手段で金を騙し取られたか知らないとは言わせない」

その時また銃がケリーを襲った。ケリーはすぐによけようとしたが足が痛く思うように動けず急所は外れたものの今度は肩をぶち抜かれて床に倒れこんでしまっ た。そしてそれと同時にキッドは銃を会長に打ち込んだが特別なシールドが会長を包み込むように囲まれていてそれは防弾ガラスの役目となってキッドの銃弾は 届く事がなかった。会長はそのまま去っていったがまた再び銃撃戦となってしまった。お町はケリーを抱き抱えながらその場を脱出し、キッドもボウィも撃ち返 しながらもその場から去り負傷したケリーをJ9基地まで連れていった。

「一体何事だ」
アイザックが負傷したケリーの姿を見て三人を睨むような目でみた。
「私が全て悪いんです。どうかお許し下さい。私が嘘の記事を書いたばっかりにこんなことに皆さんを巻き込んでしまって」
ケリーがそういうとキッドもボウィもお町も声を揃えて『嘘の記事』と叫んだ。
「あの嘘のJ9の記事は実は私が請け負った事件です。J9の噂を聞いて取材をしたかったのもあるのですが、皆さんに憧れてついJ9の真似事をしてそれをあ たかも皆さんがやったように書いてしまいました。ごめんなさい。でもお陰で皆さんに会うことができとても嬉しかった」
「嘘〜、女で一人で危ない事をしていたの。うわぁ、それってJ9顔負けよ」
お町は感心したが呆れた感情も混じっていた。一同唖然としてしまったがキッドだけはなぜかケリーのその無謀な心情がわかるような気がした。
「ああ、男も女も関係なく暴れたいって思うときぐらいあるぜ」
そうキッドがフォローするとケリーは少し慰められたかのような気持ちになった。しかしアイザックの目は厳しいままだった。
「J9の皆さんお願いです。私の依頼を聞いて下さい。お金は300万ボール払います。どうか騙された人の復讐としてあの会長の悪事を世間に公表して下さ い」
ケリーは痛みを堪えながら必死に頼んだ。その姿を見てキッドもボウィもお町も受けるつもりでいたので一斉にアイザックの顔を見た。
「わかった。その依頼を受けよう。これでいいんだろ皆」
キッドもボウィもお町も『イエーイ』とアイザックに向かって親指を立てて知らせた。

J9のメンバーは早速あの会長を探しだし、銃を向けて脅した。
「かなり悪どい事をしているらしいと聞いた。我々が騙された人達の復讐をさせて貰おうじゃないか」
アイザックがそういうと観念したのか会長は金を返すから命だけは助けてくれと懇願してきた。
「ちぇっ、なんでもっと早くそうしないんだよ。さんざんケリーを苦しめといて今更命乞いはないぜ」
キッドも腹立ちの中今にも銃をぶっ放そうという雰囲気だった。会長は泣いて頼んで自らテレビにでて悪事を公表すると言った。そして実際にその晩に特別放送 として会社の悪事を自ら公表した。

依頼通りに仕事をこなしてくれたJ9にケリーはお礼を述べた。
「J9の皆さん、ありがとうございます。やはり本物はすごいです。想像以上の強さなのがわかりました。どうか私の偽の記事の件はお許し下さい」
「ケリー、あんたも偽ながらもすごい奴だぜ。J9のメンバーにふさわしいくらいの度胸と腕を持ってるぜ」
キッドに褒められてケリーははにかんだ。
「どうだい、傷が治ったら俺と銃の勝負でもしにいかないか」
「それってデートのお誘い?」
キッドは『ああ』と返した。
「止めておくわ」
ケリーの断りにちょっと面食らったキッドだった。
「ありゃ〜、どうして断っちゃうんだい。キッドに惚れてたんじゃないのかい」
ボウィが不思議そうに質問した。
「だって、もしキッドに勝っちゃったら嫌われそうだもん」
「あちゃ〜キッドに劣らず自信過剰だわ、この人も」
お町は思わず呆れてしまった。

それから何週間か経ちJ9の元へ雑誌が舞い込んできた。
「ちょっとちょっとキッド、この記事読んだ。これケリーがあなたに向けたメッセージだわ」
お町が雑誌をキッドに向かって投げた。

『・・・このような仕事をこなすみたいだが、J9ははっきりと公表できない存在である。メンバーの中にはとても強くてかっこいい人がいて私はつい心を奪わ れてしまった。この先もずっと彼の事を思い続けていくことだろう。彼がこの宇宙に居ると思うとそれだけで勇気が沸いてくる思いがする。その思いを貰えただ けで私は満足である。出会えた事に感謝を込めてそしてJ9って最高な人達であると私は声を大にして言いたい』

「粋な真似をしやがる奴だぜ」
キッドはそう一言呟くと窓から銀河を眺めた。その様子をみてボウィが言った。
「ああ、キッドさん残念だったね。チャンスがあったのにやれなくて」
「ボウィ、お前なんて言うことを・・・」
「あれ、勝負してみたかったんじゃないの自分と良く似た腕を持つ奴と」
キッドはそれを聞いて気が抜けた。ボウィもまた自分の言った事に気が付いた。
「あっ、そっち方面も残念だったね」
「ボウィバカ野郎、お前はやっぱりやらしいんだよ」
「なんだよ、先にそっちがそう思ったんじゃないか」

二人の言い争いはJ9基地で響いていた。窓からはそれにお構いなくミルキーウエィが流れるように見えていた。

偽物相手にライバル意識を燃やしたが、やはり本物にはかなわない。それは分かっているけれど、偽物も時には良い刺激を与えてくれると思うなり。銀河旋風ブ ライガーお呼びとあらば即参上。

おわり


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